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体毛は語る! ―サルの新たな食性解明手法の開発―

2013年6月13日掲載

論文名 Characteristics of stable isotope signature of diet in tissues of captive Japanese macaques as revealed by controlled feeding (実験的給餌で明らかにしたニホンザル飼育個体の体組織と食物の安定同位体比の関係について)
著者(所属)

中下 留美子(野生動物研究領域)、濱田 譲・平崎 鋭矢・鈴木 樹理(京大霊長類研)、大井 徹(野生動物研究領域)

掲載誌 Primates, Springer、冊子体:2013年7月(予定) DOI:10.1007/s10329-013-0346-6(外部サイトへリンク)
内容紹介

農作物の食害を軽減させるために、たくさんのサルが捕獲されています。サルの食性は個体ごとに異なるため、群れの中から被害を起こすサルを特定して捕獲し、被害を起こさないサルを残すことが有効ですが、野外では見分けることが困難でした。そこで、捕獲されたサルの体毛からその個体が何を食べていたのか明らかにする手法を開発しました。

飼育しているサルに、安定同位体元素(注)の比が極端に異なる餌2種類を交互に与え、食物の変化が体毛の安定同位体比にどう影響するかを調べました。その結果、サルの体毛は、伸びていく過程で食物の安定同位体比を刻々と記録していることが明らかになりました。サルは毎年換毛し、新しい体毛は春に伸び始め秋に成長を止めます。すなわち毛先の安定同位体比は春の食物の、根本は秋の食物の安定同位体比を反映しています。サルが食べる可能性のある食物の安定同位体比をあらかじめ調べておけば、春から秋にかけて時期ごとにどんな食物をどの程度食べたかを個体ごとに明らかにすることができます。

この研究の成果を用いることによって、サルの個体ごとの食性を明らかにすることができ、加害個体の特定に役立つのはもちろん、生態解明がさらに進み、被害軽減に役立つことが期待されます。なお、この研究は京都大学霊長類研究所と共同で行いました。

(注)安定同位体元素:元素番号が同じで質量数が異なる元素。化学的な性質は同じだが、重さがわずかに違う。例えば炭素原子には、軽い12Cと重い13Cなどがある。

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