研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2017年紹介分 > 木材由来のにおい成分α-ピネンは人をリラックスさせる
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2017年3月9日掲載
論文名 |
Effects of olfactorystimulation by α-pinene onautonomic nervous activity (α-ピネンの嗅覚刺激が自律神経活動に及ぼす影響) |
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著者(所属) |
池井 晴美(構造利用研究領域)、宋 チョロン(千葉大学環境健康フィールド科学センター)、宮崎 良文(千葉大学環境健康フィールド科学センター) |
掲載誌 |
Journal of Wood Science、62(6): 568-572、December 2016、DOI: 10.1007/s10086-016-1576-1(外部サイトへリンク) |
内容紹介 |
近年、木の香りがもたらす生理的リラックス効果が明らかになりつつありますが、におい成分が人体に及ぼす影響に関するデータは少ないのが現状です。木のにおい成分の一つであるα-ピネンは、ヒノキやスギ等に多く含まれ、木質内装の居室や針葉樹林内の空気中に存在しています。α-ピネンが人の体にもたらす影響についてのこれまでの研究は、20代男性の血圧に関する報告に限られていました。そこで、本研究では、対象を20代の女性に広げ、近年開発された自律神経活動の指標である心拍のゆらぎ計測(心拍変動性)を用いて、α-ピネンが人にもたらすリラックス効果を明らかにしました。 人工気候室内(温度25℃、湿度50%、照度230ルクス)で、女子大学生13名(平均年齢21.5歳)にα-ピネンあるいは空気(対照)を90秒間嗅いでもらい、その間の生理応答として心拍間隔と心拍数を計測しました。またにおいを嗅いだ後に、嗅いでいた時の気分状態を質問紙に回答してもらいました。 その結果、副交感神経活動の指標である心拍のゆらぎ(心拍変動性)における高周波成分は、α-ピネンの吸入によって、空気の吸入と比較して46.8%有意に上昇し (図1)、心拍数も2.8%有意に低下しました。質問紙の結果でも、α-ピネンの吸入によって「快適である」と感じていることが示されました。α-ピネンの吸入は、生理的リラックス効果をもたらすことが分かりました。 木材がもたらす生理的効果に関するデータ蓄積が進むことによって、これまで経験的に知られていた「木材の良さ」が科学的に証明され、木材の利用促進につながることを期待します。
図1. 木材由来のにおい成分α-ピネンの吸入が副交感神経活動にもたらす効果 N=13、平均±標準誤差、*:p<0.05、対応のあるt検定(片側)
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