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森林における水・物質循環を駆動する林内雨滴についての解説

2017年6月29日掲載

論文名

Throughfall drop size distributions: a review and prospectus for future research.(林内の雨滴粒径分布:これまでの研究の総括と今後の研究展望)

著者(所属)

Delphis F. Levia (デラウェア大学)、Sean A. Hudson (デラウェア大学) 、Pilar Llorens (スペイン高等科学研究院) 、南光 一樹(森林防災研究領域)

掲載誌

Wiley Interdisciplinary Reviews: Water、4:e1225、June 2017、 DOI: 10.1002/wat2.1225(外部サイトへリンク)

内容紹介

森林に降った雨は葉や枝というフィルター(=樹冠)を通過して地表に到達します。樹冠に付着した雨粒はやがて集まって結合し、大きな雨滴を作ります。この大きな雨滴は、地面が露出した林内では土壌侵食を促進します。一方で、樹冠に勢い良くぶつかった大きな雨粒は弾けて飛沫となり、小さな雨滴を作ります。この小さな雨滴は、通常の雨滴や葉や枝に溜まった水よりも蒸発しやすく、森林で遮断蒸発量が大きくなる要因の一つであるという仮説もあります。このような雨滴の大きさの変化が、森林における水収支、土壌侵食、物質循環に与える影響は小さくないと考えられていましたが、林内雨滴そのものについて不明点が多く、推測の域を出ていませんでした。

そこで、林内雨滴に関する国内外の歴代の研究業績を振り返り、林内雨滴研究の入門書として使えるようにまとめ直しました。まず、林内雨滴研究がなぜ必要か、林外雨と比べてどのような特徴を持つのか、どのような専門用語があるのか、どのように測定すればよいのかを整理しました。そして林内雨滴の大きさを決める要因を植物表面、樹冠構造、気象要素の3つの観点からこれまでの研究の到達点としてまとめ直し、今後なすべき研究課題を示しました。

この成果は、林内雨滴研究の歴史をまとめた世界初の総説です。林内雨滴研究を更に進めていくことが、森林における水・土砂・物質の循環過程をより正しく把握することに役立っていきます。

 

図1:スギの葉で集合した水滴

 図1:スギの葉で集合した水滴

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