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雪中で冬眠するコウモリを日本で確認 ―ホッキョクグマ以外でははじめて―

2018年9月10日掲載

論文名

Evidence for Ussurian tube-nosed bats (Murina ussuriensis) hibernating in snow. (コテングコウモリが雪中で冬眠している証拠)

著者(所属)

平川 浩文(北海道支所)、長坂 有(道立総研林業試験場)

掲載誌

Scientific Reports 8、13 August 2018 DOI:10.1038/s41598-018-30357-1(外部サイトへリンク)

内容紹介

コウモリは1300種以上が熱帯から亜寒帯まで分布しています。寒冷地に住むコウモリの一部は冬、暖かい地方に渡りますが、多くは冬をどこでどう過ごしているのか、わかっていません。コウモリ類は森林生態系の主たる構成員の一つですが、未知の部分が多く、その生態解明が森林生態系の成り立ちを知る上で必要となっています。

コテングコウモリは体重4-8gの小さな森林性コウモリで、日本、朝鮮半島、ロシア沿海州、樺太などに生息しています。今回、過去に全国で記録された雪中あるいは雪上での発見例(22例)と、著者自身による札幌近郊での発見例(37例)の分析により、コテングコウモリが雪中で冬眠していることを明らかにしました。哺乳類ではホッキョクグマに続いて2例目です。

多雪地のコテングコウモリは、冬季、長いものでは半年以上も雪中で過ごすと考えられます。この間、体温は雪温、つまり零度に近い氷点下にあって、呼吸や心拍はほぼ停止した状態で、エネルギーを節約していると推測されます。積雪の底近くにいて、春になって雪がなくなる直前に残雪上に現れます。日中はそのままじっとしていて、夜になると体温を上げて飛んでその場を離れます。これが冬眠明けとなります。

多様で豊かな森作りのためには、そこに住む動物たちの生活の成り立ちを知ることが必要です。本研究の結果は、直接森作りに役立つことではありませんが、こうした未知の生態を一つ一つ解明していくことが、森と人とのより良い関係をつくることにつながります。

 

写真1:夏、森の中を飛行するコテングコウモリ

写真1:夏、森の中を飛行するコテングコウモリ(北海道森林管理局駒ケ岳・大沼森林環境保全ふれあいセンター提供)

 

写真2:春、雪解けにより残雪の表面に現れたコテングコウモリ

写真2:春、雪解けにより残雪の表面に現れたコテングコウモリ

 

写真3:日没後34分、体温を上げるコテングコウモリ(サーモグラフィ画像)

 

写真3:日没後66分、体温を上げるコテングコウモリ(サーモグラフィ画像)

写真3:日没後、体温を上げるコテングコウモリ(サーモグラフィ画像)
上は日没後34分、下は日没後66分、この直後に飛び去りました。

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