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人工林の生物多様性の評価モデルを開発し地図化が可能に

2019年6月25日掲載

論文名

A spatially-explicit empirical model for assessing conservation values of conifer plantations(針葉樹人工林の保全価値の空間明示型実証モデル)

著者(所属)

山浦 悠一(四国支所)、David Lindenmayer(オーストラリア国立大学)、山田 祐亮(森林管理研究領域)、キョウ 浩(元森林管理研究領域)、松浦 俊也(森林管理研究領域)、光田 靖(宮崎大学)、正木 隆(企画部)

掲載誌

Forest Ecology and Management 444:393-404、July 2019 DOI:10.1016/j.foreco.2019.04.038(外部サイトへリンク)

内容紹介

人工林は世界的に拡大しており、世界の森林の7%を占めています。人工林の拡大に伴う生物多様性の喪失を防ぐため、人工林内での生物多様性の保全が必要だとされています。また、針葉樹を植栽した人工林の場合、そこに生育する在来広葉樹の量(胸高断面積合計)が生物多様性の簡易な指標になると考えられます。そこで、この量を「自然度指数」と名付け、その林齢に伴う増加率に環境要因が及ぼす影響を統計的に解析し、人工林の生物多様性を評価するモデルを作りました。

全国的に行われた毎木調査のデータを解析した結果、自然度指数の林齢に伴う増加率には植栽樹種が最も大きく影響し、スギとヒノキでは増加率が低く、その他の主要樹種では比較的高くなりました。増加率に影響する要因として次に重要なのは植栽木の密度で、密度が低いほど自然度指数の増加率が高くなりました。その次に重要な要因は積雪深や気温でした。これらの結果に基づいた統計モデルから、自然度指数の予測図を作りました(図1)。

本研究の結果から、自然度指数に大きく影響する植栽樹種と植栽木の密度を左右する施業は、人工林の生物多様性に大きく影響すると考えられます。また、今回、開発したモデルは地理情報や現地調査から入手しやすい因子を用いているため、比較的簡単に自然度指数のモデルを構築し、地図化することができます。そのため、植栽樹種や伐期が異なる世界各地の森林での応用が期待されます。

(本研究は2019年4月にForest Ecology and Management誌にオンライン公表されました。)

 

図1  茨城県北部の人工林の生物多様性の予測図

図1.茨城県北部の人工林の生物多様性の予測図

a) 地図化の対象とした区域で、森林のタイプを地図上に示しました。人工林は植栽樹種によって色分けしています(森林以外の土地利用は白抜き)。
b) 生物多様性の地図化は人工林のみを対象とし(人工林以外は白抜き)、作成したモデルに現在の植栽樹種と林齢を入力して、人工林内の広葉樹の量を予測しました。予測された広葉樹の量は0~1の範囲で標準化し、「自然度指数」と名付けました。アカマツ人工林で自然度指数が高いことが多く、本区域では、自然度指数は主に植栽樹種によって決定されています。

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【研究担当者】
森林総合研究所 四国支所 山浦悠一
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