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天然林の林分構造の発達速度を予測して地図化が可能に

2019年8月6日掲載

論文名

A spatially explicit empirical model of structural development processes in natural forests based on climate and topography(気候と地形に基づく天然林の構造発達過程に関する空間明示型実証モデル)

著者(所属)

山浦 悠一(四国支所)、David Lindenmayer(オーストラリア国立大学)、山田 祐亮(森林管理研究領域)、キョウ 浩(元森林管理研究領域)、松浦 俊也(森林管理研究領域)、光田 靖(宮崎大学)、正木 隆(企画部)

掲載誌

Conservation Biology、Wiley、June 2019 DOI:10.1111/cobi.13370(外部サイトへリンク)

内容紹介

森林は年齢を重ねると樹高、樹木の太さ、林冠の発達程度といった構造が複雑になります。そのような森林は「老齢林」と呼ばれ、多くの生物の生息地となっています。森林の成長同様、森林の構造の発達速度は環境条件によって異なると考えられます。しかし、構造の発達速度と環境要因との関係に関する研究は少なく、伐採後に複雑な構造の森林が回復しやすい場所は明らかになっていませんでした。

そこで本研究では、日本全国で行われた毎木調査のデータから、天然林の構造の複雑さを表す指数(老齢林指数)を計算し、構造の発達速度と環境要因の関係をモデル化しました。その結果、積雪深や気温が中程度の地域や、地形が平坦な場所で発達速度が速いと推定されました。例えば同じ谷の中でも、老齢林指数が0.5(中程度の複雑さ)になるまでの年数は、尾根よりも斜面下部の方が100年以上も短いと推定されました(図1b)。また、構築したモデルから老齢林指数の予測図を作成することもできました(図1a)。

森林の構造の複雑さは生物多様性の指標の一つなので、今回構築したモデルによって、天然林の生物多様性を広域的に評価することができます。また、毎木調査のデータから、天然林、特に年齢が150年を超える天然林は、急傾斜地や積雪が多く寒冷な地域に偏って分布していることが明らかになりました。今回の結果からは平坦地のような構造の発達速度の速い場所で天然林を維持、再生することが重要だと考えられます。

(本研究は2019年6月19日にConservation Biology誌にオンライン公表されました。)

 

図1.  茨城県北部を対象とした林分構造の複雑さの予測図

図1. 茨城県北部を対象とした林分構造の複雑さの予測図。

a) 天然林のみを対象とし(天然林以外は白抜き)、構築したモデルに気候と地形、林齢を入力して構造の複雑さ(老齢林指数)を予測しました。本地域では、高齢天然林の多い北西部で老齢林指数が高くなっています。

b) 構造が中程度の複雑さ(老齢林指数0.5に相当)になるために必要と推定される林齢。青色の区域は谷底で、林齢が100年未満で構造が複雑になりますが、赤色の部分は尾根で、構造が複雑になるには180年を超えると推定されました。図1aの中央の部分を拡大して図化しています。

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森林総合研究所 研究ディレクター 尾崎 研一
【研究担当者】
森林総合研究所 四国支所 山浦 悠一
【広報担当者】
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