研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2019年紹介分 > カシワから遺伝子を受け取って、内陸のミズナラが海岸で生育できるようになった
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2019年9月13日掲載
論文名 |
Environment-dependent introgression from Quercus dentata to a coastal ecotype of Q. mongolica var. crispula in northern Japan.(日本北部におけるカシワからミズナラ海岸生態型への環境に依存した遺伝的浸透) |
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著者(所属) |
永光 輝義(北海道支所)、内山 憲太郎・伊津野 彩子(樹木分子遺伝研究領域)、清水 一(北海道林業試験場)、中西 敦史(北海道支所) |
掲載誌 |
New Phytologist、Wiley、August 2019 DOI:10.1111/nph.16131(外部サイトへリンク) |
内容紹介 |
北日本の沿岸地域の広葉樹林では、海岸にカシワが、内陸にミズナラがそれぞれ生育しています。北海道にはカシワの分布の北限があり、その北にはミズナラが海岸に生育します。海岸のミズナラは、海岸環境に適応したカシワのように毛が多く丸い葉や太い枝をつけ、内陸のミズナラと葉や枝の形態が異なりますが、その由来は明らかではありませんでした。 そこで、ナラ類の全ゲノム配列を参考にして、これら内陸と海岸のミズナラとカシワの遺伝子を調べたところ、海岸のミズナラにカシワの遺伝子が一部含まれていることがわかりました。これらの遺伝子は、内陸のミズナラとカシワの交雑と、その結果生じた子孫の数世代に渡るミズナラとの交雑によってミズナラに入ってきたと推定されました。このような現象を遺伝的浸透と言います。特定の環境に生育する種から別種への遺伝的浸透によって、遺伝子を受け取った種はその環境に進出できるようになると考えられています。 この結果は、海岸に生育するカシワから内陸に生育するミズナラに遺伝的浸透が生じ、その浸透を受けたミズナラが海岸に進出したことを示唆しており、樹木の種の分化や環境適応の仕組みを理解するうえで役立ちます。 (本研究は2019年8月19日にNew Phytologist誌にオンライン公表されました。)
写真:内陸と海岸のミズナラおよび海岸のカシワの葉と枝および堅果(どんぐり) |
お問い合わせ先 |
【研究推進責任者】 森林総合研究所 研究ディレクター 山中 高史 【研究担当者】 森林総合研究所 北海道支所 永光 輝義 【広報担当者】 森林総合研究所 広報普及科広報係 【取材等のお問い合わせ】 相談窓口(Q&A)E-mail:QandA@ffpri.affrc.go.jp 電話番号:029-829-8377(受付時間:平日9時30分~12時、13時~16時30分) |
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