研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2020年紹介分 > 須恵器生産は森林に大きなインパクトを与えた
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2020年10月05日掲載
論文名 |
栃木県南部益子地域における過去1400年間の植生変遷と人間活動の影響 |
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著者(所属) |
志知 幸治(四国支所)、内山 隆(千葉経済大学)、池田 重人(震災復興・放射性物質研究拠点)、江上 邦博(千葉経済大学短期大学部) |
掲載誌 |
日本花粉学会誌、66巻1号、日本花粉学会、2020年9月 |
内容紹介 |
日本の森林は過去の気候変動のみならず、過去の人間活動によってもその姿を大きく変えてきました。現在の森林の樹種構成を理解し、将来の分布を正確に予測するためには、これまでの森林の変遷とそれが生じた要因について知っておく必要があります。 そこで、栃木県益子町から採取した土壌に含まれる花粉(写真)の種類と個数を調べることにより、過去1400年間の森林変遷と人間活動の影響を明らかにしました(図)。益子地域では8~10世紀に須恵器生産が盛んに行われましたが、燃焼材としてアカガシ亜属(アラカシ等)やコナラ亜属(コナラ等)の樹木が大量に用いられたために、それらの樹種は減少し、代わってクリが増加したことが推定されました。一方、益子町は益子焼が有名ですが、その生産が開始された19世紀中頃以降における樹種構成の変化はほとんど認められませんでした。これは、大量の燃焼材を必要とした須恵器の生産と比べて、益子焼は少ない燃焼材で生産可能であったためと考えられます。また、次第に化石燃料が用いられるようになったことも要因として考えられます。製陶以外でも、戦国時代の軍事増強に伴う二葉マツの増加等、時代ごとの異なる人間活動によって、益子地域の森林は大きく変化したことがわかりました。 こうした知見は、人間活動が森林の成り立ちに及ぼす影響を評価する際に役立ちます。また、森林の将来の分布を予測する際の基礎資料として活用されます。
(本研究は2020年9月に日本花粉学会誌で公表されました。)
写真:土壌中から抽出したアカガシ亜属花粉(左)とクリ/シイ属花粉(右)の光学顕微鏡写真。電子顕微鏡観察によりクリ/シイ属花粉の大半はクリであることが判明した。
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