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更新日:2022年3月11日

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河川の流路内に落ちる葉の量を見積もる方法を開発しました

2022年3月11日掲載

論文名

平坦な河畔林における2次元の落葉散布シミュレーション

著者(所属)

阿部 俊夫(東北支所)、山野井 克己(北海道支所)、倉本 恵生(森林植生研究領域)

掲載誌

森林総合研究所研究報告、Vol.20-No.4( No.460)、 301-310、 2021年12月、森林総合研究所

内容紹介

森林において河川への落葉供給は、水生生物の餌資源量、水質形成、森から川・海への有機物の移動量などを評価するには重要な現象です(写真)。落葉供給源となりうる河畔林の範囲は、葉が落下する範囲に関係しますが、このような研究は少なく、落葉散布範囲を推定するモデルも十分なものはありませんでした。そこで、今回、樹木の落葉散布を面的に推定し、河川の流路内に落ちる葉の量を見積もることのできる新たなモデルを開発しました。
このモデルは風向・風速や葉の落下速度などのデータを用いて落葉散布をシミュレーションする物理モデルですが、既存モデルではできなかった面的な推定や無風時も含めた推定も可能となっています。実際の河畔林での調査結果と比較すると、樹冠下では誤差が大きいものの、樹冠から離れた箇所については落葉散布数を比較的よく再現することができました(図1)。この新モデルを用いて河畔林の落葉散布を試算したところ、河畔林が流路の風上側にあった場合にはより多くの落葉が流路に供給されることが分かりました(図2)。また、流路の蛇行も、基本的には直線的な流路よりも流路への落葉量を増加させる効果があることが分かりました。
この成果により、河川での生態系保全や水質管理を考えるために必要な情報である、河川への落葉供給量を容易に見積もれるようになりました。
(本研究は、2021年12月に森林総合研究所研究報告において公表されました。)

 

湖畔林の写真
写真:落葉期の河畔林(北海道苫小牧市勇払川)

 

図1:河畔林での調査結果を示した図

図1:モデルで推定されたヤナギ樹木の落葉散布

 

図2:河畔林が流路の風上側にあった場合にはより多くの落葉が流路に供給されることが分かるグラフ

図2:流路への落葉数と河畔林の位置、幅との関係(川幅は5mとして計算)

 

お問い合わせ先

【研究推進責任者】
森林総合研究所 研究ディレクター 玉井 幸治
【研究担当者】
森林総合研究所 東北支所 阿部 俊夫
【広報担当者】
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