研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2022年紹介分 > 隣り合った樹木同士のぶつかり合いが強風から受ける力を減らす
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掲載日:2022年7月22日
間伐は、樹木の太く真っ直ぐな成長に必要な作業であり、樹木そのものの耐風性をゆるやかに高める効果があります。しかし、間伐直後は樹木の間隔が広がるため、どうしても樹木単木への風当たりが強くなり、一時的に、台風等の強風による風倒被害が増えることが経験的に知られています。台風襲来時の樹木の揺れ方や倒れ方の分析により、樹木が受けた風の力は、隣の樹木とのぶつかり合いによって弱められていることを明らかにしました(図)。短期的、長期的な森林風害リスク評価を踏まえた森林管理手法の開発につながる成果です。
茨城県かすみがうら市にあるスギ人工林(樹齢14年)で2017年に、抜き切りをして樹木の間隔を約2.5メートルに広げた「実験区」と、抜き切りせずに間隔を約1.8メートルのままにした「無処理区」を設定しました。翌18年9月、和歌山付近に上陸した大型の台風24号が調査地に最接近する中、両区の樹木の揺れ方や倒れ方のデータを取得し、比較分析しました。
実験区と無処理区とで樹木の胸高直径(平均15.5cm)や樹高(平均13.5m)に違いはありませんでしたが、最大瞬間風速20メートルを超える強風に対し、実験区では半分の6本が倒伏しました。実験区では樹木同士の接触が少ないため、それぞれの揺れ方が不規則になり、風が急に強まったときに倒伏が多く起きていました。一方、無処理区では、互いの枝葉がぶつかり合うことにより揺れ方が規則的になり、風から受ける力を弱め、倒伏を免れていました。
(本研究成果は、2022年3月11日にScience Advances誌でオンライン公開されました。)
公開後、欧米を中心とした科学系ウェブサイトで、ニュース記事として数多く取り上げられました。
図 被害発生前後の無処理区と抜き切り実験区の樹木の揺れ方の概念図(©2022上村佳奈)
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