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更新日:2017年6月1日

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今月の自然探訪

クワカミキリのフィールドサイン

クワカミキリは、成虫の大きさが大人の小指から親指ほどになる、日本では大型のカミキリムシの1つです(写真1)。名前の通り、成虫も幼虫もクワを食べるので、クワの害虫として有名です。一方、雌成虫はクワ以外にも、50種近くに及ぶ植物に卵を産み付けます。このため、幼虫はイチジクやビワのような果樹、ケヤキやブナのような造林木、ドウダンツツジやフジのような造園木の害虫にもなっています。

成虫は、関東平野では6月下旬から9月にかけて現れ、クワ、エノキ、イチジクなどの枝上で樹皮を食べる姿が見られます。餌を食べて、おなかの中の卵が大きくなってくると、雌成虫は産卵を始めます。まず、樹皮に馬蹄形と呼ばれる特徴的なかみ傷を付けてから、その中に卵を埋め込むように産卵します(写真2)。この傷は大人の指の爪程度の大きなもので、かみ傷を付け始めてから卵を1つ産み終わるまでに約40分かかる、という報告があります。40分は長いなあ、と思いながら私もこの時間を計ったことがありますが、やっぱり40分間かかりました。

雌成虫がこれだけ丁寧にかみ傷を付けて産卵するのは、なぜでしょうか。幼虫は枝や幹の内部をトンネル状に掘りながら食べ進みます(写真3)。このため、卵はあらかじめ枝や幹の中にあるほうが好都合です。しかし、樹木は傷を付けられた箇所から大量の樹液を出して、卵や幼虫を溺れさせようとします。これに対し、雌成虫は広く、深く傷を付けて樹液の流れを遮断した中に産卵することで、卵や幼虫が溺れないようにするのだと考えられています。

幼虫が掘るトンネルにも樹液が溜まりますが、幼虫もこれへの対処法をもっています。トンネルから樹皮に向けて、焼き鳥の竹串程度の太さの穴をあけ、そこから掘った木くずや排泄物とともにトンネル内の樹液を排出するのです。これは、幼虫がトンネルを掘り進むたびに行われるので、樹幹表面には排出のための穴が連なる様子が観察できます(写真4)。

このような産卵のための傷跡とか、木くずや樹液の排出跡は、クワカミキリのフィールドサインでもあります。産卵は大人の指程度の細い枝で行うことが多いですが、木くずや樹液の排出はケヤキやブナの太い幹にも見られます。散策のついでに探してみてはいかがでしょうか。

(森林昆虫研究領域 北島 博)


写真1:クワカミキリ成虫
写真1:クワカミキリ成虫

写真2:クワの枝に付けられた産卵のためのかみ傷とその中の卵
写真2:クワの枝に付けられた産卵のためのかみ傷(左)とその中の卵(右)

写真3:ブナ樹幹の断面に見える幼虫が食べ進んだトンネル
写真3:ブナ樹幹の断面に見える幼虫が食べ進んだトンネル

写真4:ケヤキ樹幹表面に見える樹液の排出跡
写真4:ケヤキ樹幹表面に見える樹液の排出跡

 

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