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更新日:2019年9月2日

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今月の自然探訪

スギの大敵 ―赤枯病―

樹木は非常に寿命の長い生き物です。寿命が長いため、実生苗から成木に成長するまでの間に多くの微生物(主に菌類)に寄生され、病気にかかります。中には、強い病原力を持った微生物に寄生されてしまい、本来の寿命を全うできず枯死してしまう場合もあります。

スギは、日本各地に植栽されている主要造林樹種であり、我々にとって身近な樹木の1つです。現在、人工林に植えられているスギの多くは、樹齢50年以上の成木ですが、初めは実生または挿し木から苗木が仕立てられ、それを山に植えるところから始まっています。山に植えるまでの苗木の時期は、特に病原菌の影響を受けやすく、枯死してしまうものも少なくありません。スギは重要な林業樹種であるため、苗木の病害についても古くから研究が行われ、これまでに様々な病害が報告されてきました。今回は、その中から代表的な苗木の病害である「赤枯病」について紹介します。

スギ赤枯病は、Passalora sequoiaeという菌類によって引き起こされる病気で、その名の通りスギを赤く枯らしてしまいます(写真1)。4月中旬~下旬、赤枯病にかかって枯死したスギ葉の表面には分生子柄と呼ばれる暗緑色の菌体が発達し、毛羽立った様子が観察できます(写真2)。この毛羽立った菌体の先端には、病気の感染源になる分生子と呼ばれる胞子を形成します(写真3)。分生子は、湿った空気と風によって近くのスギ苗木に運ばれて新たに感染・発病し、そこで再び分生子を形成することで被害を広げていきます。分生子の形成は、11月中旬頃まで続きますが、晩秋に感染した場合や発病しても生き残ったスギ苗木は、病原菌の越冬場所となります。翌春、越冬した病原菌は再び分生子を形成して感染を拡大していくという生活環を送っています。

日本でのスギ赤枯病の被害は、今から100年以上前の1909年に突然発生したとされています。なぜ日本で突然発生したのでしょうか?この病原菌はもともと日本には生息していなかったからです。本病は1900年代初頭に北アメリカから輸入された針葉樹苗木とともに持ち込まれてしまった侵入病害だと考えられています。感受性の高い宿主であるスギが広く分布する日本は、P. sequoiaeにとってとても居心地の良い環境なのでしょう。

(きのこ・森林微生物研究領域 安藤 裕萌)

写真1 赤枯病で枯れたスギ
写真1 赤枯病で枯れたスギ

写真2 感染した葉に形成されたスギ赤枯病菌の分生子柄
写真2 感染した葉に形成されたスギ赤枯病菌の分生子柄

写真3 スギ赤枯病菌の分生子
写真3 スギ赤枯病菌の分生子

 

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