ダイバーシティ推進室 > シンポジウム・セミナー参加報告 > ひとりひとりが輝くダイバーシティ・マネジメント~産総研講演会参加報告
更新日:2018年7月23日
ここから本文です。
モノカルチャーの組織はサステイナブルではないと、講師の内永氏。経営陣を男性が占めるモノカルチャーな組織は、昔は良かった。ビジネスモデルが一定であり、その中で改善すれば良い時代だったから。でも、今は世界が急速にフラット化し、ビジネスモデルを変えないと生き残れない時代になった。モデルを変えるためには、異なった発想の人々の採用・登用(多様性の確保)が必要で、その第一歩が女性活用。
内永氏は元日本IBMでダイバーシティの推進を担当した方です。当時、IBMは経営危機に直面しており、ルイス・ガースナー会長が、大規模なリストラ(171カ国40万人を16万人にまで削減)とともに、立て直し戦略の1つとしたのがダイバーシティ推進(女性活用)でした。これは、IBMのそれまでの成功体験をぶちこわすために必要な戦略として行われ、各組織の管理職に女性活用戦略と目標値を立てさせ、それを会長自ら1対1でレビューしたため、管理職たちは本腰を入れざるをえなかったとのことです。
内永氏らダイバーシティ推進担当者は、まず目標を立て(1998年の管理職女性比率1.5%を5年後に13%へ:期間中に目標は実現)、その目標を達成するために、女性活躍を阻む要因を徹底的に調査しました。その結果、「仕事と家事・育児とのバランス」などの問題が明らかになりました。
そこで、まず必要な対策として、「時間と場所にしばられない」働き方を会社に要求し、働き方改革を実現していきます。2000年には画期的な「e-ワーク制度(在宅勤務)」を制定し、ITを活用したフルタイムの在宅勤務を可能にしました。翌年にはe-ワークの適用範囲を育児・介護の社員に限らず拡大。上司が確認するのは、社員が与えられたミッションを果たしたかどうか、やると言ったことがやれているかどうかだけ!「いつ、どこで」は不問。
驚くほど大胆な働き方改革ですね。このような改革ができたのは、最高経営者のコミットメントとリーダーシップがあったからこそ。本当に効果のある働き方改革は、「トップの腹落ち」がなければ実現しないと、内永氏は主張します。
在宅勤務というと、ITのセキュリティは大丈夫?と思う方もいるでしょう。会場からも、セキュリティについての質問がありました。それに対して内永氏が、在宅勤務でセキュリティの問題は起こらない、セキュリティの問題が起こるとしたら(在宅勤務のための)技術的な問題ではなく、むしろ使用する人間のマインドの方が大きい、と明言したのが印象的でした。
また、働き方改革をすると、全体の業務量が減るのではという心配もありますが、内永氏は、そのために必要なのが、定期的な仕事の棚卸しだと言います。不必要な仕事、無駄な仕事を削減することです。
女性のキャリア・アップ阻害要因として、さらに指摘されたのが「オールド・ボーイズ・ネットワーク」。これは、長い間、男性中心の社会だった組織で阿吽の呼吸で共有されてきた独特の文化や雰囲気のこと。これに対しては、社内の女性ネットワークの構築やメンタリングなどの対策を行い、働く女性や管理職の女性が孤立しない環境を整えていったそうです。これは、女性活躍を進める上で、見落としがちですが、とても重要な視点であり、効果的な取り組みだと思います。
厳しい競争社会で企業が生き延びるために行ったダイバーシティ対策、その効果の大きさはIBMが実証済み。体験に裏打ちされた話は、とても興味深く、説得力がありました。
内永氏の、女性たち+みんなへのメッセージから、幾つか紹介します。
ひとりひとりが輝く働き方の秘訣であるダイバーシティ・マネジメント。「時間と場所にしばられない」柔軟な働き方と、これまでのモノカルチャーの常識を打ち破ることが、一人一人にとっても、組織にとっても、大事ですね。
林業経営・政策領域(ダイバーシティ推進室併任)宮本 基杖:記
お問い合わせ
Copyright © Forest Research and Management Organization. All rights reserved.