ダイバーシティ推進室 > 知る > ダイバーシティ推進セミナー > 第29回エンカレッジ推進セミナー開催報告
更新日:2021年3月10日
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日時:令和元年7月29日 月曜日 15時~17時 場所:森林総合研究所本館2階 大会議室(TV会議中継あり) 講師:柘植 あづみ (つげ あづみ)氏
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柘植あづみ先生には当機構のダイバーシティ推進本部のアドバイザーとして、これまで長きにわたり様々な助言をいただいているところです。このたびエンカレッジ推進セミナーの講師をお願し、表題の内容をご講演いただきました。以下にその内容の一端を、紹介させて頂きます。
生物の多様性は、同じ種でさえも非常に多様な面を見せます。私たち人間は、男女の性別だけでなく、年齢、障碍の有無や種類、国籍、エスニシティ、宗教、言語、性的指向、などの、様々な多様性を持っています。そうした多様な立場の人々が、いろんな役職につくことによって、私たち自身が多様性を学べる機会を持つことができます。多様性の推進は、マイノリティの権利擁護ということだけではなく、組織にとって有意義となりえます。経済的にも多様性を包摂している会社の方が、経済的危機にも強いとも言われています。
このたび大型車椅子を必要とする方が国会議員に当選したところ、国会内の通路幅が狭くて通れないなど課題が現れ、通路やトイレ、車も含めた改修が始まりました。昔なら、「自力で国会に入れない人が国会議員になるなんて」と自他ともに考えたかもしれませんが、今は幅広く容認される時代になりました。カナダでは、障碍者の国会議員が提言して、様々な建物を障害者も利用できるよう改修したそうです。
またこのカナダの議員は、国歌に含まれる「息子たち」という表現は男性以外の性を代表しているとは考えにくいので「私たち」に変更することを提案しました。最終的に歌詞は変更されたそうです。このように、多様性の気づきは、私たちの生き方に負担を強いてくることもあります。しかし気づきが拡がることで、差別等の問題だけではなく、自分の生き方や人生を色々と選択してゆくことに広がりを持てることが世界中で認識されています。
社会的に「多様性」が強調される際、マイノリティに対する差別、不利益、不公正である法律や制度、慣習は是正される必要があるという前提があります。世界あるいは国としてだけでなく、もうちょっと小さな組織、社会の単位でも是正が推進されるべきです。マイノリティとは、単に構成員が多様になることを指すのではありません。単に数的に少数派ということではありません。社会的に、政治的に勢力が弱い、発言権が弱い、不利な立場にある人々を指しています。マイノリティを積極的に意思決定する立場に包摂することが重要です。
たとえば、私たちの半分は男性で、半分は女性です。今のところ、女性の方が組織、社会の中で不利な立場になっていると考えられます。ここで東日本大震災のときの避難所、仮設住宅の運営の事例をあげましょう。自治会の会長はほぼ男性であったため、運営は男性主体でした。女性には食事、掃除などが依頼されました。しかし、男性には女性にとってどんな支援物資や気配りが必要なのかわかりません。たとえば、支援物資には若い女性むけの下着がありませんでした。また、若い女性が生理用品をとりに行ったら、係の男性から袋を破って一個だけ渡され、ショックを受けた事例もありました。もしそこに女性が担当として加わっていたら、すぐに気が付いてよりよい対応が出来たでしょう。
もうひとつの例として、日本の医療分野の産婦人科にかかる重要な委員会の場で、女性の委員が0の場合がありました。各組織のリーダーから選んだところ、結果として男性だけになってしまったそうです。しかしそうしたこと自体が問題になるのではないか?という発想が、その場にはありませんでした。
このように多様性をめぐる課題には、自分が普段あまり考えなくてもいられるような案件が、いくつもいくつも出てきます。最初から「それは無理だよ」そこでストップさせてしまったら、その問題自体が、問題として取り上げられない状態になります。自分が「それは最初から無理だよ」としていることでも、もしかしたら「無理だよ」ではなく、なんとかしてみることで変化がおこるかもしれません。そうしたことで多様性を受け入れられるかもしれないことを意識しましょう。
「この多様性を受け入れられない」というよりも、それ以前に「その多様性に気づかないこと」が先ず問題です。そうした多様性がここにあったということを気づかずに、「配慮をしなかったということを気づいていくこと」がスタートと思います。その次に、「何が受け入れられないのか」、「なぜ受け入れられないのか」を、お互いに話す機会を持ちましょう。誰かが声を上げなくてはなりません。そしてコストの問題や、それ以外の問題の存在について、話し合うところまで行かないといけません。
多様性を進める一番簡単そうな方法は、リーダーが勝手に決めてしまうことです。コストをかけるなど、トップダウンである程度は進みますが、現実には、困って戸惑う職員たちが出ることでしょう。困ったところを吸い上げて改良してゆくところがないと、トップダウンで進める場合の問題は大きくなると予想します。
人の中にある価値観、文化は重要です。しかしマイノリティに対して「やっぱりそれは受け入れられないよね、違うよね。」という考えのみに捉われると、ダイバーシティは進んで行きません。そうした自分の考えをお互いに口に出して、お互いに考え合うことが、ダイバーシティを潤滑に進めてゆくことになると考えています。ダイバーシティとは何かなと、もう一度、考えてみましょう。そして、気づくことから考えてみましょう。
本セミナーには3回のグループワークも含まれていました。具体的にはセミナー中に適宜グループを作り、「多様性を認めるためのコストとベネフィットはなにか」「女性はなぜ管理職になれない、ならない」などのテーマについて、1テーマあたり5分間前後の意見交換をおこない、その結果をグループ代表者が会場に向けて報告しました。講義とグループワークが一体化したこのたびのセミナーは、笑いあり、悩みの吐露もあり、参加者はいろいな考えを知る有意義な時間を過ごせたのではないかと思います。
森林植生研究領域・植生管理研究室(ダイバーシティ推進室併任)星野 大介:記
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