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オオアカズヒラタハバチ
Cephalcia isshikii TAKEUCHI
- 分類 膜翅目 ヒラタハバチ科 PAMPHILIIDAE
- 体長 老熟幼虫:14~22mm 成虫:12~16mm
- 被害 幼虫が針葉を食害する。幼虫は糸を吐いて小枝の又部分等に巣をつくり自分の糞でおおい,内部に群棲するので被害は目立ちやすい。大発生し,林が全滅したという例がある。
- 生活史 1~2年に1世代〈1984年佐呂間の発生例では2年に1世代であった)。幼虫で越冬。5月下旬~6月上旬に蛹になり6月中,下旬に成虫が出現する。雌成虫は針葉の付根にふつう1個ずつ産卵する。1つの小枝でふ化した幼虫は集合して上記の巣をつくる。成長すると,この巣の中に自分のみが入る巣房をつくり,食害しないときはこの中に入っている。8月中,下旬に地上に降り地中の粘土層に土の部屋をつくりその中で幼虫で越冬する。粘土層がない場合(砂等)にはかなり深い(30cm以上の)場所で越冬する。2年に1世代の場合,次の年も土の中で幼虫で夏を越し越冬する。
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巣上のオオアカズヒラタハバチ幼虫 |
土の部屋の中で越冬中の
オオアカズヒラタハバチ幼虫 |
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オオアカズヒラタハバチの雌成虫 |
オオアカズヒラタハバチの被害を
うけたヨーロッパトウヒの並木 |
カラマツハラアカハバチ
Pristiphora erichsoni (HARTIG)
英名 Larch sawfly
- 分類 膜翅目 ハバチ科 TENTHREDINIDAE
- 被害 幼虫がカラマツ類の葉を食害する。針葉のうち短枝葉のみを食害するため,長枝葉は残るのが普通である。激害になると林全体が黄褐変する。
- 生活史 年1世代。幼虫で越冬。7月中旬に蛹化し,7,8月上旬に成虫が出現する。ほとんどが雌で単為生殖を営んでいるようである。卵は新梢内に並べるように産下される。幼虫は群って枝の先端部から基部の方向へ食いすすむ。その枝の全葉を食害すると他の枝へ移動して同様に食害する。8月下旬~9月上旬になると幼虫は地上に落下し,地中3~6cmの落葉層内に潜って長径1cm内外の長楕円形の褐色の繭をつくり,この中で幼虫のままで越冬する。
- 幼虫は驚くと尾部をもちあげ体をU字型に曲げて,一種の防御反応をする。
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カラマツハラアカハバチ
の終齢幼虫 |
カラマツハラアカハバチ
の若齢幼虫 |
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カラマツハラアカハバチ
の雌成虫 |
カラマツハラアカハバチに
産卵されたカラマツ新梢 |
カラマツキハラハバチ
Pristiphora wesmaeli (TISCHBEIN)
英名 Larch sawfly
- 分類 膜翅目 ハバチ科 TENTEREDINIDAE
- 被害 幼虫がカラマツ類の葉を食害する。とくに長枝葉のみを食害するので, 長枝が枯れる。
- 生活史 年1世代。幼虫で越冬。6月下旬~7月上旬に成虫が出現する。性比は 雌3:雄1の割合で雌の方が多い。単為生殖をする個体もあると思われる。雌成虫 は新梢末端の展開中の新葉に産卵する。産卵数は1回に1個のようである。このた め,密度が低いときは1長枝に1頭の幼虫が普通である。しかし,先に産卵されて いても,次の産卵のときに避けるといったことはないらしく,密度が高くなって くると,1長枝に2~3頭が食害することになる。老熟すると地上に落下し,深さ1 ~3cmのところに潜入して,繭をつくり越冬する。(北海道における発生は最 近確認されたばかりで生活史はよく分っていない。成虫は富樫一次博士に同定し ていただいた)
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カラマツキハラハバチの終齢幼虫 |
カラマツキハラハバチの卵 |
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カラマツキハラハバチの雌成虫 |
カラマツキハラハバチの
被害をうけたカラマツの枝 |
マツノミドリハバチ
Nesodiprion japonica (MARLATT)
英名 Pine sawfly
- 分類 膜翅目 マツハバチ科 DIPRlONIDAE
- 加害樹種 ストローブマツ,カラマツ,ヒマラヤシーダ,その他のマツ類
- 被害 幼虫が針葉を食害する。針葉を先端から残らず食害する。発生が多いときには,被害木が枯死する。北海道ではストローブマツでの発生が多い。
- 生活史 年2世代。幼虫で越冬。北海道におけるくわしい調査はされていない。7月と10月の2回幼虫がみられる。若齢幼虫は1針葉に数頭むらがって食害している。第1回目の幼虫は主として旧葉を食害,成熟すると針葉間または梢頭部に褐色楕円形の繭をつくって蛹化する。第2回目の幼虫は新しく伸びた針葉を食害する。10月下旬頃に,粗皮の割目,落葉等の中で繭をつくり幼虫のままで越冬する。
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マツノミドリハバチの終齢幼虫 |
ストローブマツ針葉間に
作られたマツノミドリ
ハバチの繭 |
マツノミドリハバチの成虫 |
エゾマツハバチ
Pristiphora ezomatsuvora TOGASHI
- 分類 膜翅目 ハバチ科 TENTHREDINIDAE
- 体長 老熟幼虫:液漬標本釣11mm 成虫:5~6mm
- 加害樹種 アカエゾマツ,その他のトウヒ類(エゾマツは食害しないようである)
- 被害 幼虫が葉を食害する。当年葉のみが食害されるので被害木は赤くなるが,すぐに枯れることはない。しかし,何年も激害が続けば枯死する恐れもある。
- 生活史 年1世代。幼虫で越冬する。5月中旬に蛹化した後,5月下旬~6月上旬に成虫が出現する。
雌成虫は開葉してまもない新しい針葉に数粒かためて産卵する。ふ化した幼虫ははじめ針葉の間にもぐって食害しているが,成長するにしたがって外に現われる。6月中~下旬の食害が大きい。7月中旬,老熟した幼虫は地面に落下して赤褐色の繭をつくり,その中で越冬する。
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エゾマツハバチの幼虫 |
エゾマツハバチの成虫 |
エゾマツハバチの被害を
うけたアカエゾマツの枝 |
ポプラハバチ
Trichiocampus populi OKAMOTO
英名 Poplar sawfly
- 分類 膜翅目 ハバチ科 TENTHREDINIDAE
- 被害 幼虫が葉を食害する。大発生をし全葉を食害された例はあるが,枯死させたという報告はない。
- 生活史 年2世代。幼虫で越冬。5月下旬~6月上旬に成虫が現われ,葉柄に列状に産卵する。ふ化した幼虫は群になり並んで葉を食害する。成熟すると分散するが,同様に頭をそろえて食害しているものが多い。7月下旬地上に降り,土中で,時々は葉裏や樹皮の裂け目などに繭をつくって蛹化する。2回目の成虫の出現は8月上旬で,中旬にはふ化幼虫がみられる。10月中旬に地上に降りて土中や地被物などに潜入し繭をつくって越冬する。
- 1984年の調査で本種の幼虫に極めて似たハバチが発見された。今まで,2種が混同されていた可能性もあるので生活史については再検討を要する。
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ポプラハバチの幼虫 |
ポプラハバチの成虫 |
ポプラハバチに
産卵された葉柄 |
オウトウナメクジハバチ
(別名 ウチイケオウトウハバチ)
Caliroa cerasi LINNAEUS
英名 Pear sawfly
- 分類 膜翅目 ハバチ科 TENTHREDINIDAE
- 分布 北海道,本州,ヨーロッパ,アメリカ,オーストラリア,ニュージーランド,タスマニア
- 被害 幼虫が葉を食害する。幼虫は葉の上面の葉肉をたべるので裏面の葉皮と葉脈のみがのこり,まるまり茶白色になる。多数の幼虫が食害すると葉は紙のようになる。
- 生活史 年2(3)世代。前蛹で越冬。6月中,下旬に成虫が現われ,葉の上面の組織内に1粒ずつ産卵する。ふ化した幼虫は葉の上面の葉肉を食べて成長し,老熟すると地上に降り土の中で繭をつくり蛹になる。第2回目の成虫は7月下旬,8月上旬に現われ,第1回目と同様な経過を経る。8月下旬~9月上旬に地上に降り,根際の地中3cm附近に繭をつくってその中で越冬する。
- このハバチは成虫の形態の変異が多く,翅脈でも大きく異なる個体がみられる。
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オウトウナメクジハバチの幼虫 |
がいとう膜を除いたオウトウ
ナメクジハバチの幼虫 |
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オウトウナメクジハバチの成虫 |
写真の成虫とは異なった翅脈 |
シラカバノクロボシハムグリハバチ
Fenusa pusilla(LEPELETIER)
- 分類 膜翅目 ハバチ科 TENTHREDINIDAE
- 被害 幼虫が葉内にもぐりこんで葉肉をたべる。そのため被害葉は表皮だけ残り袋状になる。多数寄生するとすべての葉が黄変し秋の枯葉の様相を呈する。これによって枯死することはない。
- 生活史 年3~4世代(気候に左右される)。幼虫で越冬。第1回目の成虫は5月中旬頃から現われ,シラカンバ葉脈基部に産卵する。ふ化した幼虫は葉肉をたべ成長する。1~2週間で食いつくし,地上に落下して土壌中で蛹化し,羽化する。地上で過す期間は夏期は3~4週間程度である。これを2~3回繰り返して,10月下旬に地上に落下したものは幼虫のまま越冬に入る。
- 同様のシラカンバの被害には潜葉性のガの幼虫もあり,外見上は見わけがつかないが糞の形が異なることで見分けることができる。
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シラカバノクロボシハムグリ
ハバチの幼虫 |
シラカバノクロボシハムグリ
ハバチの成虫 |
シラカバノクロボシハムグリ
ハバチの被害をうけた
シラカンバの葉 |
サクツクリハバチ
Stauronematus compressicornis (FABRICIUS)
英名 Poplar sawfly
- 分類 膜翅目 ハバチ科 TENTEREDINIDAE
- 被害 幼虫が葉を食害する。北海道で激害が報告されたことはない。
- 生活史 北海道での詳しい調査はされていない。年3~4世代。蛹で越冬。札幌では6月上旬から9月中旬まで幼虫がみられる。l世代に40日程度要する。幼虫の食害痕は,最初蛇行しているが,成長するにしたがって,大きな穴となる。幼虫は食害する際に,周囲に白色とげ状の柵をつくるので容易に見つけることができる。和名の由来もこれによる。
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“さく”とサクツクリハバチの幼虫 |
サクツクリハバチの被害
をうけた葉 |
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サクツクリハバチの成虫 |
ドロノキの葉に産まれた
サクツクリハバチの卵 |
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