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更新日:2019年2月26日

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異なる気候帯に植栽されたチークの材質の変化と植栽適地の判定

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1.共同研究機関

マレーシアプトラ大

2.研究期間

2015~2017年度 JSPS科研費

3.責任者

米田 令仁(四国支所)

4.研究の背景

チークは材質がよく価格も高いため、天然分布している東南アジアをはじめ、世界中の熱帯季節林地域で広く植林が進められています。熱帯季節林の研究では、心材割合や材密度など材の特性や成長速度は、降水量や土壌養分に影響されることが知られています。しかし、マレーシアなど湿潤熱帯に植栽されたチークについては一般的に植栽に不適と言われていますが、研究例が少なく、本当に植栽に適していないのか判断できない状況にあります。

5.研究の目的

本研究ではタイから半島マレーシアにかけて、異なる気候区分に植栽されたチークについて材特性や成長量と気象を比較することで、植栽不適地とされている半島マレーシアのチークがタイのチークよりも成長や材が劣るのかどうか明らかにしました。

6.研究内容

本研究課題では、これまでチーク(Tectona grandis)植林に不適とされてきた半島マレーシアで、様々な地域に植栽されたチークについて幹の直径と樹高を測定し、幹の材を採集して材密度を調べ、タイのチーク人工林で調べた結果と比較しました。調査はマレーシア半島部のPerlis州、Selangor州、Pahang州、Negeri Sembilan州、Malacca州、Johor州の計6林分でおこないました。

7.得られた研究成果

マレーシアのチーク6林分の結果と植栽適地から不適地を含むタイの研究結果と比較すると、幹の胸の高さ部分の平均直径(平均胸高直径)、優勢木の樹高(上層樹高)は、タイで調べられた値に近い値ででした(図1)。また、材密度もタイで報告されている範囲にあり、林齢が高いと材密度も高い傾向にありました(図2)。このことから、植栽不適地とされてきたマレーシアでも、直径成長や樹高に加え材密度もタイで報告されている範囲内で、収穫まで遜色ない成長が見込まれると考えられました。

 

本研究とタイ国内のチーク人工林の林齢と上層高の関係

本研究とタイ国内のチーク人工林の林齢と材密度の関係

図1.本研究とタイ国内のチーク人工林の
林齢と上層高の関係。点線は東北タイの
収穫表による上層高の範囲。

 

図2.本研究とタイ国内のチーク人工林の
林齢と材密度の関係。

 

 

8.研究成果の利活用

これまで半島マレーシアではチークは植栽に不適な樹種を考えられてきたことから、これまで半島マレーシアに植栽されているチークの評価は低かったのですが、本研究からチークを再評価できることが明らかとなり、チークを植栽候補樹種として提案することに活用されます。

9.研究論文

米田令仁、田中憲蔵、市栄智明、Mohamad Azani Alias(2017)半島マレーシアの4点に植栽されたチークの成長の比較.関東森林研究, 68(1), 37-40.

米田令仁、田中憲蔵、Mohamad Azani Alias、Nor Zaidi Jusoh、Amir Saaiffudin Kassim、Ahmad Zuhaidi Yahya.(2018)半島マレーシアの6地点に植栽されたチークの成長と材密度. 関東森林研究, 69(1), 3-6.

 

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