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再造林を促進し魅力的な林業に貢献するため、成長が格段に優れた種苗の供給が求められています。現在利用されているスギやヒノキの苗木の多くは、精英樹(第1世代)を親木として生産された種子から作られています。
この精英樹(第1世代)を次世代化し、一段と成長・材質等に優れたものを第2世代以降の精英樹(「エリートツリー」と呼んでいます。)として選んでいけば、極めて優良な苗木の供給が可能になると期待されます。
関西育種場では関係機関と連携し、第2世代精英樹の候補木を選抜・保存しています。
選抜したヒノキ第二世代精英樹候補木 候補木からの採穂 保存した候補木クローン
30年生時の地ヒノキ、第一世代精英樹、第二世代精英樹候補木単木材積比較(高知県安芸市)
平成25年5月に改正された「森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法」により、都道府県のほか「特定増殖事業計画」を作成し、都道府県に認定された民間事業者(認定特定増殖事業者)に対し、農林水産大臣が指定する特に成長等に優れた「特定母樹」の原種を配布することとなりました。
花粉症は、社会的に大きな問題となっています。関西育種場は府県と連携し、スギ及びヒノキについて、成長や幹の通直性等に優れた精英樹の中から、雄花の着生が認められないか、またはきわめて僅かである品種を開発しています。
また、普通のスギと同様に雄花を着けるものの、花粉を全く生産しない無花粉スギ品種として、平成19年度に「スギ三重不稔(関西)1号」を開発しました。さらに、無花粉スギ品種「三重不稔」と精英樹等の人工交配を行い、成長、材質等に優れた無花粉スギ品種の開発を進めています。
スギの中には雄花(花粉)の生産量が極端に少ない個体があります。
ヒノキの中にも雄花(花粉)の生産量が極端に少ない個体があります。
少花粉ヒノキ(黄色い雄花がついていない) ふつうのヒノキ(葉の先の黄色く色づいているのが雄花)
関西育種基本区で雄性不稔スギ1個体を発見しました。(平成19年度に「スギ三重不稔(関西)1号」と命名)
雄花の接写写真(1,4)
雄花断面の実体顕微鏡写真(2,5)
雄花断面の電子顕微鏡写真(3,6)
松くい虫被害(マツ材線虫病)は、マツノマダラカミキリによって運ばれた体長約1ミリの線虫であるマツノザイセンチュウがマツの樹体内に侵入することにより引き起こされるマツの伝染病です。被害は明治時代から発生していましたが、昭和40年代後半以降西日本各地で激害となり、その後北上を続け、現在は北海道を除く全国で被害が発生しています。
関西育種場は府県と連携し、マツノザイセンチュウ抵抗性品種の開発を進めています。
マツノザイセンチュウの人工接種による検定
抵抗性候補木の選抜 → 一次検定、二次検定 → 抵抗性品種の開発、普及
採種園で種子生産 → 山へのアカマツの植栽 → 海岸へのクロマツの植栽
地球温暖化対策に資するため、幹重量の大きい品種が求められています。幹の炭素貯留量は、材積(成長)と材密度(容積密度)の積で推定できます。
関西育種場は府県と連携し、幹重量の大きい品種の開発を進めています。
造林費用の3~4割を占める下刈り作業の軽減に資する、初期成長の早い品種の開発が求められています。
ヒノキでは、初期成長の早いさし木品種の開発を目指して、現行精英樹のさし木試験を実施しています。スギでは、四国地方で選抜したスギ第二世代精英樹候補木のさし木発根性評価及びさし木試験地の造成を進めています。また、スギでは、人工交配により、初期成長の早い次世代集団の育成も行っています。
関西育種場は府県と連携し、初期成長に優れた品種の開発を進めています。
ヒノキ精英樹のさし木(四国増殖保存園)
四国のヒノキ精英樹のさし木発根率
初期成長の早いスギ品種の開発
建築用材の強度に関する品質表示義務化や乾燥材の利用拡大に伴い、強度等材質に優れた品種への需要が高まっています。
関西育種場では、関係機関と連携して次代検定林等において、ファコップ、ピロディン、FFTアナライザー等の測定機を用いた非破壊的な方法で、ヤング率、容積密度、含水率等の材質形質を調査しています。
関西育種場は府県と連携し、材質優良品種の開発を進めています。
ファコップによる測定 ピロディンによる測定 FFTアナライザーによる測定
絶滅危惧種トガサワラの保全を効果的に進める上で、遺伝的多様性や地域間の遺伝的な差異を把握しておくことはきわめて重要です。
関西育種場では、DNAマーカーを用いてトガサワラの地域集団間の特徴を明らかにしました。その結果を踏まえ、トガサワラの遺伝的特性を損なわないよう収集・保存を行っています。
探索・収集(採穂) トガサワラの天然林(三重県大又) 増殖
種内に保有する遺伝変異の把握(収集・保存すべき集団の箇所数や個体数等の検討に資するものとなります。)
DNA分析 地域間で異なる遺伝的構成
※ STRUCTURE解析:集団の遺伝的構成の違いを複数のクラスター(色)の構成比により図示化
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