森林総合研究所について > 公開情報 > 交付金プロジェクトの評価 > 平成14年度交付金プロジェクト研究課題評価結果 > 森林の適正管理に係わる野生動物のアダプティブマネージメントの適用
更新日:2010年5月11日
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主査氏名(所属): 北原 英治(野生動物研究領域長)
担当部署 : 野生動物研究領域、森林植生研究領域、九州支所
研究期間 : 平成12~16年度
1.目的
我が国の野生動物の保護管理を規制する唯一の法律である「鳥獣保護及ビ狩猟ニ関スル法律」が改正されるに伴って「特定鳥獣保護管理計画制度」が創設された。この特定鳥獣保護管理計画制度は、科学的知見を根拠に、計画的に個体数管理を行うことになっている。しかし、科学的知見を得るための技術的な体系と実施体制は必ずしも整っていないのが現状であり、被害対策としての防護柵による植生回復、新たに発生する被害の予測や、加害者であるシカ個体群モニタリング手法の開発など技術的な支援を行うことを目的としている。
2.当年度の研究成果の概要
全国で設置されているシカ防護柵による植生回復に関する調査では、シカによる剥皮の被害率の経年変化と林床植生、特に更新稚樹を調べ、ササ類による植被率に関連することを明らかにした。また、個体群モニタリング技術に関しては、シカの捕獲場所を地図上で異なる大きさでメッシュ化(1~5km)することにより」解析して、シカ捕獲が同一地域で毎年繰り返し行われていることを明らかにした。さらに、ハザードマップによる被害発生予測のためのシカ生息ポテンシャルマップを福岡県東部地域の英彦山周辺を対象として作成し、実際のシカ分布様式を検討した。その結果、補間法を応用すると、ニホンジカ生息密度調査地点という点在している調査点より得られた情報から、ポテンシャルマップという連続した空間分布を表すことが可能になった。
3.当年度の発表業績
4.評価委員の氏名(所属)
神崎 伸夫(東京農工大学農学部野生動物管理学講座助教授)
5.評価結果の概要
それぞれの課題で、重要かつ興味深いデータが得られているとの印象を受けた。まず、防護柵による植生回復に関する調査では、植生調査について重要なデータが集まりつつあるが、シカ密度のデータと対合させた検討が必要である。また、捕獲地点の分布情報では、捕獲個体の性・年齢といった情報を入れることにより、九州シカの社会構造や、密度分布と被害分布の関係、狩猟者の環境選択といった知見を得られる可能性がある。被害予測技術では糞塊法のデータを用いたシカの密度分布構造が示されたが、次年度に実施される被害情報との重ね合わせの結果に期待したい。また捕獲情報や目撃情報などと照らし合わせることにより、作成された密度分布の有効性についても検討していただきたいと思う。また同時に進行している鳥獣害プロジェクトとの棲み分けも考える必要があるように思える。
6.評価において指摘された事項への対応
シカ密度に関するデータは既存しており、関係機関からの提供を予定している。被害予測では、捕獲・目撃情報なども加味して有効性を検討する。鳥獣害プロジェクトでは、適正密度の検証を中心に研究が展開されているが、本課題では各府県で実施されている「特定計画」を遂行するための技術的データを提供する点で計画を異にしている。
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