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更新日:2010年5月11日

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平成14年度 交付金プロジェクト研究課題 中間評価結果

課題名 : 木質建材から放散される揮発性有機化合物の評価と快適性増進効果の解明

主査氏名(所属): 海老原 徹(研究管理官)

担当部署 : 複合材料研究領域、樹木化学研究領域、加工技術研究領域

研究期間 : 平成14~16年度

1.目的

社会問題化している「シックハウス症候群」は、ホルムアルデヒド等のVOC(揮発性有機化合物)に起因すると考えられているが、VOCには、毒性の明らかなものや木材の天然成分のように人に対して有用なものも含まれている。しかし、種々の木質建材から発生するVOCの放散実態や人への健康増進効果は定量的にはわかっていない状況である。

そこで、木材からの天然のVOC(テルペン類等)の放散実態や放散後の変化(動態)とそれが人に対して快適性を増進する効果を明らかにする。

2.当年度の研究成果の概要

小型チャンバ法によりスギ気乾材、人工乾燥材からのVOC放散量を定量し、トルエン・キシレンについては厚生労働省指針値を下回るが、総揮発性有機化合物(TVOC)については暫定目標値を大幅に上回ること、及び、天然乾燥材よりも加熱蒸気乾燥したスギ材のほうが、著しく少なくなることがわかった。

スギ、ヒノキ天然成分に由来するVOCを特定し、δ-cadinene, α-muurolene, α-cubebene, calamenene, γ-cadinene等のセスキテルペン類の割合が多いことがわかった。

リモネンの吸入は、主観的に快適で、自然であると感じられていた。生理的には、脈拍数の低下、脳活動の鎮静化を認め、生体がリラックスしていることがわかった。ダニの行動抑制効果に関しては、α―ピネン、β―ピネン、リモネンは、ピペリトンやシトロネラールに比べ、弱い行動抑制効果を示すことが確認された。

3.当年度の発表業績

  • 1)大平辰朗:針葉樹由来の揮発性有機化合物、AROMA RESEARCH、13(2003.2)
  • 2)Y. Miyazaki, T. Morikawa and E. Hatakeyama: Nature and comfort, 6th International Congress of Physiological Anthropology, Abstracts ,20(2002)

4.評価委員の氏名(所属)

小野拡邦(東京大学大学院農学生命科学研究科教授)

5.評価結果の概要

木造住宅及び木材業界にとって大きな問題であり、しっかりした手法で正確なデータを蓄積していくことが重要である。その際、下記の点について検討を要する。

1) オゾン・紫外線等によりテルペン類が変質し、ギ酸等の有害物質が生成するという指摘があるが実験的に確認しておく必要がある。2)テルペン類の人等へ影響については、濃度レベルを考慮する必要がある。

6.評価において指摘された事項への対応

関連省庁と連携してデータの共有化・正確化を図っていく。環境因子によるテルペン類の変化を解明する。テルペン類の快適性増進効果等については、厚生労働省指針値濃度レベルを考慮し実験を進める。

 

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所属課室:企画部研究管理科研究安全管理室

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