平成14年度 交付金プロジェクト研究課題 中間評価結果

蓄積の増大している国産材の需要拡大を図るため、国のみならず、県レベルでも地域の木材を市場に出すために林産関係の研究部門を創設・拡充し、施設の充実を図っている。これらを効率的に運用し成果をあげて行くには、国と地域の連携を一段と深めながら技術開発を推進する必要があり、長年の経験とノウハウを持つ森林総合研究所の支援が求められている。ここでは、地域産材の需要拡大に対する視点が明らかになった地域と森林総研が共同して、建築用材としての利用や新用途開発に資する各種技術資料の整備、木質材料に付加価値を付与する技術等国産材利用のための加工技術の開発、さらに構造用製材品の強度データべースの構築を行う。

この研究は、国産材利用のための加工技術の開発と強度データベースの構築からなっている。

スギ・カラマツによる異樹種構成集成材の接合部の最大耐力および最大耐力に達するまでの吸収エネルギーは、いずれもスギ単独の集成材の場合よりも高い値を示し、異樹種複合による効果が見られた。また、徳島県の民家型モデル住宅の実験で、梁に40mm厚のスギフローリング（本実加工）を直張りした床では、一般の在来軸組構法住宅の床よりも重量床衝撃音の遮断性能はかなり低い値であった。今後地域的な特徴を生かした利用方法を検討する。岩手県産のスギ製材を横方向に積み上げて、通し材を通し、柱に留めつけた受け材にビス留めした壁を開発し、面内せん断試験により耐力を評価した結果では、真壁の約1.2倍の壁倍率が得られた。また、国産材を無垢のまま環境負荷の低い、住宅資材として用いる際には、人の手垢やシミによる汚れ、雨水や光による劣化、腐朽やカビによる劣化等が問題となるため、これらを防止する技術を岐阜県及び鳥取県の公設研究機関と共同で行った。その中で、カーボンブラックを用いた汚染評価法を開発し、木材の抽出成分や表面の凹凸のほか、塗装木材表面の電気的特性が汚染に大きく関わることを明らかにした。

構造用製材や丸太等の各種木材の強度については、従来から各県の公設研究機関と連携してデータの集積を重ねて来たが、これらをデータベースとして整備することとし、そのためのデータ集積、データベースフォーマットの追加、データ管理システム用プログラムの基本設計を行った。

伏谷賢美（東京農工大学名誉教授）

研究計画にしたがった研究が進められており、いずれの研究課題も新しい価値ある研究成果を得ている。また、当初の予定通りに木材強度データべースの構築が進んでいる。研究計画を推進する上で特に支障は認められず、次年度以降の研究計画も妥当である。各研究課題に関連した分野で分担者は高い研究実績があり、地域研究所との連携もうまく行っている。国産材利用に対して有用な研究成果が得られることが期待できる。得られた研究成果を論文等として早期に公表するよう努めていただきたい。

さらに研究を進展させ当初の目標を達成するよう努力すると共に、研究論文やデータベースとして研究成果を速やかに公表するよう努力する。