森林総合研究所について > 公開情報 > 交付金プロジェクトの評価 > 平成14年度交付金プロジェクト研究課題評価結果 > サビマダラオオホソカタムシを利用したマツノマダラカミキリ防除技術の開発
更新日:2010年5月11日
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主査氏名(所属): 田畑 勝洋(研究管理官)
担当部署 : 森林微生物研究領域、森林昆虫研究領域、東北支所、関西支所、九州支所
研究期間 : 平成14~18年度
1.目的
マツノマダラカミキリの天敵に関するこれまでの研究成果から、サビマダラオオホソカタムシが防除素材として有望であることが明らかになってきた。さらに、サビマダラオオホソカタムシの人工飼料による大量増殖法も開発されたことから、これらの成果を元にサビマダラオオホソカタムシを利用したマツノマダラカミキリ防除技術を本研究において開発する。
2.当年度の研究成果の概要
滋賀県野州町において、マツ枯死木へのサビマダラオオホソカタムシ成虫を放飼した結果、マツノマダラカミキリへの寄生割合(寄生率)は実測値47%であり、推定値は65%であった。岩手県盛岡市におけるマツ枯死木丸太へのサビマダラオオホソカタムシ卵の接種による寄生率は53.4%で、成虫放飼による寄生率は29.3%であった。茨城県つくば市におけるマツ枯死木丸太へのサビマダラオオホソカタムシ卵の接種では、3月15日、4月15日、5月1日及び5月15日の施用での寄生率は、74~95%であった。
3.当年度の発表業績
4.評価委員の氏名(所属)
真宮靖治(元玉川大学農学部教授)
5.評価結果の概要
全体として当年度の研究達成度は高く、次年度以降の成果への期待を大きくするものであった。とくに野外放飼、林内定着・密度維持、寒冷地適応性などの研究課題においては、次年度への継続発展を確実にする成果があがっている。
九州の微害林を対象とした研究課題については、当年度計画が未完であることから十分な評価には至らないが、示された成果についていえば、研究目的との整合性に関して議論の余地を残した。当年度の本研究全体の成果を踏まえて、研究計画の見直しを提言したい。この場合、サビマダラオオホソカタムシの分布実態を知ることが、計画策定の妥当性を左右することにもなるので、九州に限らず、本研究課題全体としてこの問題への対応を可能にする取り組みが必要である。当年度における成果も一部示されていたが、引き続いての課題継続を期待する。とくに九州については、この問題を優先する課題設定とする必要がある。標的外昆虫へのホソカタムシ放飼の影響調査は、当年度実施内容から、期待される成果の妥当性に疑問が残った。長期的視点にたった計画の再検討が必要と思われた。
ホソカタムシのマツノマダラカミキリ探索機構解明に関しては、解明への切り口を明らかにしたといえる成果をあげていたので、当面この切り口での進展が期待できる。
6.評価において指摘された事項への対応
天敵昆虫を害虫防除へ利用する際には、「天敵昆虫は、使用される地域の周辺で採取されており、放飼によっても人畜に害を及ぼさないこと」がガイドラインになりつつある。平成13年度の事前推進評価を受けて、サビマダラオオホソカタムシ分布の文献的調査を行った結果、分布域が九州から東北にわたっていることが明らかになった。今後、可能な限り、各地域でのマツ枯死木割材及び皮剥ぎによるサビマダラオオホソカタムシ分布調査を行い、放飼用個体の捕獲に努力する。
サビマダラオオホソカタムシの標的外昆虫への影響調査では、サビマダラオオホソカタムシ放飼区及び無放飼区の昆虫相の継続調査を行う。さらに、マツ樹幹生息昆虫を対象とした野外及び室内での寄生試験を行うことによって、直接的な影響を調査する。
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