平成14年度 交付金プロジェクト研究課題 中間評価結果

ヨーロッパや北米を中心とした森林衰退の原因として、酸性雨等の環境汚染物質による影響の可能性が疑われ、各国で酸性降下物のモニタリング網が構築された。日本でも環境庁が東アジアネットワークを構築し、林野庁も国内森林域の降水成分のモニタリングを行った。本研究では、林野庁のモニタリングネットワークと連携を取りつつ、酸性降下物等の負荷実態と森林・渓流への影響のモニタリングを行う。

全国8箇所のモニタリングセンターステーションにおいて、降水と渓流水の水質モニタリングを実施し、データの蓄積を図った。その結果、降水のpHは3.7～7.5、ECは2～190μS/cm、渓流水のpHは6.2～7.9、ECは30μS/cm程度で、全般的には従来と大きな違いは認められなかった。ただし、平成14年3月は黄砂現象が激しく、この時期の降水は全国的にpHとECが通常より高い値を示した。

樹木の年輪幅や密度の解析の結果から、奥日光地域の日光白根山におけるオオシラビソは、最近50年間の指数値がそれ以前とほぼ同じ水準で変動しており、衰退の兆候は認められないことを明らかにした。

なし

岡崎正規（東京農工大学大学院生物システム応用科学研究科教授）

環境変動が森林に及ぼす影響をモニタリングによって明らかにする研究プロジェクトの目的は達成されつつあり、長期にわたるデータが集積している。成果を早期にわかりやすく公表することや将来予測が可能であるか等の具体的方向を示すことを検討する必要がある。

各細部課題毎に第1期と第2期の取りまとめを行い、早急に森林総合研究所研究報告の研究資料として公表することとした。