平成14年度 交付金プロジェクト研究課題 中間評価結果

国産材の需要拡大を図るために、木構造部材などを対象にした付加価値の高いエンジニアリングウッドの開発、高機能性内装材の開発などが研究機関や民間企業等で進められている。一方,国民の住宅性能向上に対するニーズはますます高まっており,住宅の性能表示とともに部材の品質保証が重要な課題になってきている。

このような背景から,新たに開発された木材製品や軸組構造用材等の位置づけを性能基準の面から明確にし,構造設計や国際規格に対応していく必要がある。このため官民で広く展開されている開発の状況を的確に把握し,開発された製品が性能表示に対応できるように,技術的な補完及び製品の性能評価に関する研究を行う。

集成・複合部材の最適乾燥技術の開発に関しては、集成材工場の調査結果に基づいてラミナを対象にした乾燥タイムスケジュールを開発した。このスケジュールは、樹種や材質による乾燥の仕上がり状態に合わせて各スケジュールのステップの持続時間を増減させることで実用に供することが可能である。

構造用面材料のせん断性能の評価法確立に関しては、実大の面材料の強度性能を的確に測定しにくい点があった従来のTwo-rail shear (TRS)法を改良した油圧方式の改良型TRS法により、簡便にかつ的確に強度性能を評価することができるようになった。

構造用面材料の耐火性能に関しては、面材料の燃え抜け時間は、密度が高くなると長くなる傾向にあった。継ぎ手加工部分からの燃え抜き防止には、非加熱面側にアルミテープなどの不燃材での裏打ちが必要である。

寸法の異なる構造用面材料の曲げ性能評価技術に関しては、小試験体を用いた試験結果から実大材の曲げ性能を予測する方法を確立した。

木質新素材を接着接合した建築用部品の強度及び耐久性評価技術に関しては、促進処理をしたFRPと木材の接着製品のブロックせん断強さは、接着剤の違いにより多少の差はあるが、高温で浸せき処理をしたほうが低下が大きく、またせん断強さの低下率は、試験体の寸法が大きいほど大きくなった。

針葉樹構造用材の耐久性及び劣化の評価技術に関しては、素材耐久性や薬剤効力の評価にファンガス法が有効であることが分かった。土壌中に埋設した集成材の積層方向の超音波伝搬時間はシロアリの食害度が高くなるほど遅くなる傾向を示した。構造物中の部材の耐久性能の試験方法として、既往の研究成果を活用した床下環境や壁体構造をシュミレートした試験方法を考案した。

佐藤雅俊（東京大学大学院農学生命科学研究科助教授）

建築基準法等あるいは材料や部材等の性能の国際的な規格化に対応すべく、建築用材として国産材を利用していくための各種性能評価に関する試験方法とその評価方法の開発は、今後、木質系の材料・部材等を適切かつ有効に利用していく上で極めて重要である。このような考えからスタートしたこのプロジェクト研究において得られた成果は、学会等での発表のみならず、ISO等の国際規格に反映され、また関連するJAS規格等の改正や新設等にも反映されており、高く評価できる。また試験方法や評価方法の開発のみならず、これまでデータの無かった部分の補完も行われてきており、民間企業等にとっても有益なデータが蓄積されてきている。快適で安全な社会の構築に向けた重要な研究も多く含まれており、防耐火性、耐久性などに関する研究を一層強力に進める必要がある。

規格改正や新設の際に、また木材の加工現場で役立つように成果のとりまとめを行うとともに、関連機関等と連絡を密にして規格の適正化に努めるとともに、実用的なデータを蓄積する。