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平成14年度 交付金プロジェクト研究課題 中間評価結果

課題名 : スギ材の革新的高速乾燥システムの開発

主査氏名(所属): 久田 卓興(研究管理官)

担当部署 : 木材特性研究領域、加工技術研究領域、構造利用研究領域、木材改質研究領域

外部参画機関 : 九州大学農学部、京都大学木質科学研究所、愛媛大学農学部、高知大学農学部、長野県林業総合センター、愛媛県林業試験場、大分県林業試験場、熊本県林業研究指導所、住友林業筑波研究所

研究期間 : 平成12~16年度

1.目的

高品質なスギ乾燥材の安定供給と利用拡大を可能にするため、乾燥困難なスギを短時間で経済的に乾燥しうる革新的な高速乾燥技術を開発し、用途に応じたスギ材乾燥技術の体系化を図る。このため、一連の技術開発、すなわち材質的なバラツキの多いスギ材の用途を原木供給段階で選別する技術開発、圧力制御下における水分除去と木材物性に係わる最新の知見を活用した乾燥日数を従来の数分の一に短縮可能な革新的高速乾燥技術の開発を行い、建築用材としての性能確保と経済性を達成しうる乾燥技術を確立する。

2.当年度の研究成果の概要

原木段階でのスギ材の選別技術については、原木内部の含水率分布を計測する新しい測定法を開発し、特許を申請した。また、原木丸太のヤング係数分布モデルから製材品の強度性能を予測する方法を明らかにした。これらは原木の用途区分に役立つ技術である。乾燥過程の材のモニタリング技術については、温度と圧力を同時に測定する新しい技術の有効性を明らかにした。湿熱処理による割れ防止技術については、実務的な適用条件を明らかにしたが、これらは既存の高温乾燥技術の実用化に貴重な情報を与え、この技術が急速に民間企業に普及しつつある。また、温度や圧力の制御を基本とする新しい高速乾燥技術の開発については、高温処理や圧力制御の効果が明らかにされつつあり、内部割れを防ぎ且つ急速乾燥を可能にする処理条件の一部を明らかにした。しかし、実用化に際しては処理材の性能を低下させないような改善が必要である。これらの処理に関連して、水分移動、高温域のおける粘弾性的性質の変化、スギの材質による影響や処理材の強度性能や耐久性への影響等を検討し、適正処理条件の解明のための情報を蓄積した。また、乾燥材を建築用途に使用する際の適正条件を明らかにするため、乾燥材と未乾燥材で構成されたパネルを製作し、その強度性能を経時的に測定すると共に接合部の性能評価を行った。乾燥材の生産プロセスの適正化を図るため、生産工場において環境負荷に関する調査を行い、現場で容易に得られるデータを用いた環境負荷評価の方法を提案した。

3.当年度の発表業績

  • 1)鈴木養樹、木材の材内含水率及びその分布を測定する方法並びにそれらの装置、特許出願、2002-250113、2002.8
  • 2)長尾博文、鷲野剛三、加藤英雄、田中俊成、樹幹内のヤング係数分布に基づいた製材品の強度推定-カラマツへの試み-、木材学会誌、.49、2、59-67、2003.3
  • 3)金川靖ら、パラフィン高温液相乾燥におけるスギ構造材へのパラフィン浸透特性、木材学会誌、.48、5、356-362、2002.9
  • 4)W. Cheng, T. Morooka and M. Norimoto, Shrinkage stress occurring in the drying process of wood using superheated steam, Wood Research, 89, 25, 2002.
  • 5)Kubojima,Y.・Suzuki, Y.・Tonosaki, M., Real-time measurement of vibrational properties of green wood at high temperatures, Wood and Fiber Science,34,643-650, 2002.10
  • 6)石川敦子・黒田尚宏、高温水蒸気処理したスギ材の吸湿特性、森林総合研究所研究報告、1、3、179-180、2002.11
  • 7)齋藤周逸・信田聡(東大院農)・吉田孝久(長野林総セ)・西村勝美(住木センター)、木造住宅の構造材に現れた含水率分布、木材工業、57、438-443、2002.10  

4.評価委員の氏名(所属)

岡野健(日本木材総合情報センター木のなんでも相談室長・東京大学名誉教授)
祖父江信夫(静岡大学農学部教授)
笠木和雄(名古屋木材株式会社社長)

5.評価結果の概要

スギ材の乾燥技術は着実に進んでおり、すでに実用段階で応用できる技術も具体的な成果として表れてきている。3年目としては目標を達成していると思われるし、最終年度までには大きな成果を生み出せると確信できた。今後は、乾燥法に応じた割れの発生限界を明確にし、製品の用途別推奨乾燥法、用途に応じた乾燥水準の基準等を系統的に整理し、単なる学術的成果だけでなく業界で誰もが利用できる技術として集大成されることが望ましい。

6.評価において指摘された事項への対応

プロジェクト後半に向けての研究推進方向を明確にするため、これまでの成果を総合的に整理して中間時点での取りまとめを行う。また、このうちいくつかの成果を広く一般に公開し、乾燥現場への普及を図る。また、開発中の新乾燥技術を含め、各種乾燥方法の適用性を集大成するため、次年度から新規課題「用途に対応した性能確保のための乾燥処理技術の体系化」を加える。

 

お問い合わせ

所属課室:企画部研究管理科研究安全管理室

〒305-8687 茨城県つくば市松の里1