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更新日:2010年5月11日

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平成15年度交付金プロジェクト研究課題中間評価結果

課題名: 針葉樹人工一斉林の針広混交林化誘導手法開発のための基礎的データセットの作成

主査氏名(所属): 佐々朋幸(研究管理官)

担当部署: 九州支所、東北支所

参画機関: 福岡森林林業技術センター、大分県林業試験場、熊本県林業研究指導所、秋田県森林技術センター、山形県森林研究研修センター

研究期間: 平成15~17年度

1.目的

日本国内で広範に造成された針葉樹人工一斉林に対して、自然力を活用しつつ、生物多様性の保全や森林造成コストの低減など、地域森林所有者や地域住民のニーズに応じた針広混交林への誘導手法の開発が求められている。こうした背景を受けて、当プロジェクトでは、九州地域と東北地域を対象にした現地適用型手法開発の第一段階として、針葉樹人工一斉林への広葉樹の侵入・生育開始後の成林予測に向けて、立地データ、植生データ、社会・経済データ等を素材とした基礎的データセットを作成する。

2.当年度研究成果の概要

九州では県ごとに森林GIS が構築されているものの、小班界ベクトルデータのデジタル出力機能に差があるため、森林計画図と森林簿を熊本県球磨村管内で29枚と約39,000件、福岡県星野村管内で10枚と約29,000件入手し、今後の基盤情報となるGISデータベースを効率的方法で構築した。一方、針葉樹人工林44地点、皆伐地17地点、アカマツ林6地点、薪炭林4地点での調査データを収集・解析し、高海抜不成績造林地で一部の広葉樹がスギと同階層にまで達し、貴重種を含む有用樹も相当数が定着していることを明らかにした。

秋田県米内沢地域で樹種簿の樹種別蓄積データとランドサットTMデータを利用し、常緑樹、常緑樹-落葉樹、落葉樹-常緑樹、落葉樹の4タイプに分別した後、数値化された林小班界およびGISソフトArcViewを利用して森林タイプ図を作成した。一方、秋田県東成瀬村の調査から、スギ人工林を混交林へ誘導できる標高は660m以上890m以下であり、890m以上ではスギ人工林、混交林とも成林が困難であることを明らかにした。

3.当年度の発表業績

  • 粟屋善雄・田中邦宏:ランドサットTMデータを用いた森林変化モニタリング指標の検討、スギ林の伐採と成長のモニタリング、写真測量とリモートセンシング42(5)、60-702003.11
  • 粟屋善雄・西園朋広:ランドサットTMデータとスギ林蓄積の関係、-TMデータ、森林調査簿データと収穫調査データの相互関係-、日本林学会関東支部大会発表論文集55、89-90、2004.3
  • 小南陽亮・齊藤哲・永松大・田内裕之・佐藤保:九州中央山地高海抜地域の不成績造林地における林分構造の変化、九州森林研究57、87-93、2004.3
  • 正木隆・中村松三・太田敬之・大谷達也・大原偉樹・杉田久志・斎藤宗勝・神林友広・長池卓男:白神山地奥赤石林道沿いのスギ・広葉樹混交林の群集構造と5年間の変化、東北森林科学会誌8、75-83、2003.9
  • 野田巌:林地における地籍調査前後での面積の変動と調査の進捗状況、九州森林研究57、67-72、2004.3
  • NODA Iwao and HAYASHI Masahide:Characteristic Differences of Non-Reforested Lands Compared with Reforested Lands in Kumamoto, Kyushu(熊本県における再造林地と比較した再造林放棄地の特徴的差異) 森林総合研究所研究報告390、29-32、2004.3
  • 大原偉樹:スギ・広葉樹混交林で発生した冠雪害の特徴-スギ林と比較した事例-、雪氷65、533-541、2003.11
  • 齊藤哲・小南陽亮・永松大・佐藤保・大谷達也:暖温帯のスギ人工林内における広葉樹類の混交状態、九州森林研究57、83-86、2004.3
  • 杉田久志・猪内次郎・百目木忠之・田口春孝・岩根好伸・大石康彦:カラマツ人工林間伐後のカンバ類の更新 -林冠疎開と地床処理の効果-、東北森林科学会大会講演要旨集8、80,2003.8

4.評価委員氏名(所属)

小野寺弘道(山形大学農学部付属演習林教授)

5.評価結果の概要

1) 参画機関の役割分担が明確、課題毎の人員配分が適正、更に責任体制もしっかりと整っており、効率的に研究推進していることを評価する。
2) 3年間と限られた研究期間の初年度として、データの収集および整理作業を予定通りに進めたこと、データ解析に着手して当初の予定より早く幾つかの重要成果を上げたことにより、今年度の研究目的を達成したと評価する。次年度以降も組織的に、意欲的に研究を推進してもらいたい。

6.評価において改善を指摘された事項への対応

(改善を指摘されたわけではないが、評価結果を受けて、以下の姿勢で今後に臨みたい。)
1) 研究会や意見交換会の機会を増やすなど、いっそう密な連携体制の下で研究推進してゆく。
2) 最終目的生産物である基礎的データセットを作成するため、解析と検証を重ねてデータの品質を高めつつ、統合化に向けたデータの加工方法についても様々と試行してゆく。この過程で得られる成果については、学会誌等を通じていち早く公表してゆく。

 

 

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