森林総合研究所について > 公開情報 > 交付金プロジェクトの評価 > 平成15年度交付金プロジェクト研究課題評価結果 > サビマダラオオホソカタムシを利用したマツノマダラカミキリ防除技術の開発
更新日:2010年5月11日
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主査氏名(所属): 松浦邦昭(上席研究官)
担当部署:森林微生物研究領域、森林昆虫研究領域、東北支所、関西支所、九州支所
研究期間: 平成14~18年度
1.目的
サビマダラオオホソカタムシはマツ枯れの原因であるマツノザイセンチュウの伝搬者マツノマダラカミキリの幼虫を被害材内で捕食することが報告されていた。ところが最近、人工飼料により本種を大量に増殖する技術についての顕著な進歩がみられた。そこで、本種を大量に放飼し、林地被害木内のマツノマダラカミキリ幼虫を駆除する技術を開発する。それにより、マツ枯れを防ぐ。
2.当年度研究成果の概要
サビマダラオオホソカタムシ成虫をマツ材線虫病被害木に放飼し、放飼効果をみたところ、無放飼木でのマツノマダラカミキリの生存率が94.7%であったのに対し、放飼木におけるそれが15.4%と低く、本種成虫の放飼により被害木内のマツノマダラカミキリを高率で死亡させ得ることを確認した。また、放飼成虫の一部は林内で越冬し、次年まで生き残ることを明らかにした。本種の分布調査を行い、鳥取県の野外被害木からサビマダラオオホソカタムシ成虫の脱出が確認された。成虫の脱出期間は8月から10月であったが、これは、つくば地域での調査結果と一致した。岩手県において、サビマダラオオホソカタムシの越冬のあることを明らかにしたが、産卵は確認できなかった。
3.当年度の発表業績
4.評価委員氏名(所属)
真宮靖治(元玉川大学農学部教授)
5.評価結果の概要
全体として、進捗している。特に、サビマダラオオホソカタムシの生活史が解明されたこと、また、野外放飼試験で、マツノマダラカミキリに対する殺虫効果が確認されたことは、実用的な放飼法開発に向けての着実な前進と評価できる。各地での分布調査において、分布が確認されなかった地域については、次年度は、地域に即したより体系的な調査法をもって臨むことを要望する。発育に関して、東北地域での産卵条件解明の取り組みに期待したい。
6.評価において改善を指摘された事項への対応
当該天敵の生息・分布実態の解明については、調査法、あるいはその取り組みが、必ずしも万全でなかったとの評価委員の指摘もあり、次年度は地域に即したより体系的な調査法をもって臨むこととしたい。発育に関して、温度や日長条件の影響を検討することは、発育限界条件を明らかにするという点で分布実態の予測にもつながることから、特に東北地域での取り組みを強化することとする。
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