平成15年度交付金プロジェクト研究課題中間評価結果

森林の組成・構造等が生物多様性に及ぼす影響評価と、多様性の指標種とその生息域の関連性の定量的評価に基づき、生物多様性に関わる指標の測定・評価手法が開発される。

広域の森林を対象としたセンシング技術の高度化により、森林生態系の健全性と活力の維持に関わる指標の測定・評価手法が開発される。 

北海道における広域での生物多様性推定の研究では、奥定山渓試験地での植生構造とササ被覆および更新補助作業種との相関を示したこれまでの結果に基づき、GIS 情報を利用してササ被覆と更新補助作業のマッピングを行った。

生物多様性を表す指標生物の研究では、小川学術参考林（北茨城）周辺の皆伐後林齢の異なる（1～約170年）落葉広葉樹林10地点に設定した共通プロットで植物と、昆虫,ダニ、キノコ類の関係を調査し、相互の関係の解析を進め、指標としての林齢の妥当性を検討した。

森林の健全性の研究では、林分への着葉率の適用として、奥定山渓国有林内における林分衰退度をGIS上に載せた。

2003年10月28日～31日に高知市および高知県梼原町において国際ワークショップ（以下国際WS）を開催し、カナダ、アメリカ、オーストラリア、韓国、インドネシアの研究者と、持続的森林管理のための基準指標に関する討議を行った。生物多様性や健全性の実現可能な指標化は、林業やCDMにおける関心事であり、その方向性に議論が集中した。

中間報告書をProceedingsの形で刊行した。

中静透（総合地球環境学研究所教授）
小林紀之（（社）日本林業技術協会）

生物多様性、森林健全性指標と国内に通用するための実行可能な具体策を、研究成果に基づきどのように作成すればよいか、方向性を示すことが今後の課題と考えられる。その成果を森林認証制度やCDMに応用発展させることは可能と思われる。

生物多様性の評価に関しては予想以上の成果がある。また、健全性に関しては集中的な検討が行われ、研究結果と研究方向が整理された。これらの成果を受け、指標化への具体的見通しや、今後の問題点が明らかとなった。共同研究を通じて国際的な視点も生かされている。

最終年度に向け、国際的視点を失わずに、これまでの研究成果と討議内容ををまとめて、具体的で実現可能な指標化を行う。