広葉樹林化のための更新予測および誘導技術の開発

・三重大学(機関ホームページ

菌類と樹木は助け合っているのか?

─共生微生物を活用した人工更新技術の開発─

目的

 陸上に生育するほとんどの植物の根には、菌類の一種である菌根菌が感染して,菌根を形成します。菌根を介して、菌根菌は植物からの光合成産物を獲得し、植物は、菌類は土壌中からリンや窒素などの無機養分や水分を効率的に獲得することができます。そのため、菌根の形成により、樹木は栄養分や水分の少ない土壌においても生育することが可能になります。菌根菌には、植物の根の組織の細胞壁内部まで侵入する内生菌根菌と、そこまで侵入できず細胞間隙に留まる外生菌根菌とにわけることができます。これら菌根菌の種類は、植物の種によって異なり、樹木の場合、スギやヒノキには内生菌根菌であるアーバスキュラー菌根菌が、シイ・カシ類には外生菌根菌が感染します。これまで、スギヒノキの人工林としてきた場所を、シイ・カシなどの広葉樹に変える場合、この外生菌根菌を活用することで、効率的に樹種を変えることが期待できます。しかし、宿主樹木と菌根菌との関係についてはまだまだわからないことがたくさんあります。例えば、

・ヒノキやスギ林の土壌中に外生菌根菌が菌根を形成しないでも生息し続けているのか?
・もし生息していたらどのような種類がどれくらいいるのか?
・ 生息する外生菌根菌の種類は,植えられた苗木の成長にどのようにはたらくか?

 そこで本研究課題においては、外生菌根菌を活用した広葉樹の効率的な植栽技術の開発に向けて、スギヒノキ林の土壌中で外生菌根菌の存在様式について解明するとともに、シイ・カシ類への菌根菌の感染技術の開発に,三重大学と森林総合研究所との共同研究で取り組みます。


結果

これまでの成果:
(1) ヒノキ人工林の林縁部に生育するコナラの成木から、ヒノキ林内に向けて異なる距離の地点の土壌を採取し、そこでコナラ実生を育てて、その根に形成される外生菌根の数と特徴を調査しました。その結果、菌根形成率は、林縁から林内に向かうにつれて減少し、種構成も単純化していることが判りました。





(2) 滅菌土壌を入れたポットでコナラ実生を育て、ツチグリを接種したところ、接種2週間後から菌根が観察され、徐々に菌根の形成された部位は拡大しました。非感染苗と比べた明瞭な成長の差は認められませんでした。










最終的な目標
 土壌中に非菌根の状態で潜在する菌根菌の評価手法、および外生菌根菌を用いた菌根菌感染苗の作成手法を確立して、マニュアルを作成します。