人工林のアメニティ評価

 まず初めに、京都・北山における磨き丸太林を中心とした人工林のアメニティ機能評価を取りあげる。

 人工林というと、フォレストスケープとしては、例えばスギの一斉造林地で伐採跡地が目立ったり、アカマツ林がマツ枯れで見苦しい姿をさらしたりなどマイナスイメージも強い。しかしながら、人工林にも様々なフォレストスケープがあり、例えば大径木林には二次林や天然林より壮大なフォレストスケープを呈するものもある。そして、おおむね管理がしっかり行われてさえいれば、相応のフォレストスケープがつくり出せる。逆に、フォレストスケープを意識した人工林づくりを行えば、きわめて質の高いものを作ることができる。

 アメニティ機能の評価に際して、評価者を森林に関する専門的知見を有するものと地元居住者に分けた。地元居住者は、さらに二つの地域においてそれぞれ選出した。北山は林業地域であり、居住者に森林所有者が多いため、評価者は地域内で有数の森林所有者でもある。したがって、ここでの地元居住者は、地域の森林を熟知している者である。

 まず、人工林のアメニティの階層構造は、磨き丸太林、台スギ林、一般用材林に3大別できる。例えば、地元居住者による人工林アメニティ階層図は図1のようになる。

 

磨き丸太林のアメニティ

 磨き丸太林のアメニティの構成因子として、地元居住者の各グループがあげたのは、(特殊な) 人工的整形美・均一性・枝下高・通直性といった、人手がいかに細かく加わるかによって高められる整形的アメニティと、清れつさ・林内の明るさと言った、人手が加わることが前提となる環境の快適性である。

 これに対して、専門家は、整形美・明るさに、磨き丸太林を含む北山全体の森林景観を構成する、森林の多様性を加えている。

 次の階層においては、整形的アメニティを構成する因子として地元居住者は、密度・枝打ち・育種・添え木・クローネ・樹高・直径・通直性・枝下高・完満度を抽出した。専門家は、枝下高・通直性・クローネ・清れつさ・人工シボ・樹高を抽出した。地元居住者・専門家それぞれに共通した因子も抽出したが、加えて地元居住者は育種・添え木といった、地域に特殊な因子をあげている。

 森林・林内環境の快適性を構成する因子として、地元居住者は、枝打ち・施肥・下草刈り・間伐・山野草を、専門家は、枝打ち・下草刈り・クローネをあげた。専門家が、磨き丸太林を人工的に管理する森林の代表ととらえているのに対し、地元居住者は、色彩豊かな山野草で林内が明るくおおわれる自然景観にも価値をおいている。

 

 専門家が評価した多様性の因子は、樹種・伐区の小ささ(小伐区であるということ)・林齢であった。樹種は、スギ・ヒノキ・アカマツなどの人工林と広葉樹二次林が、適地適木に配置されていることを指す。伐区は、1ha未満の小伐区が連続することにより、そしてそれぞれの伐区が様々な林齢で構成され、多様性の繊細な調和を生み出している。伐区の小ささは、伐採跡地を取り囲む林分によって、更地を覆い隠し、高齢林と若年林の混在は、クローネと幹を際立たせている。

 磨き丸太林の最大の特徴である小さなクローネのこんもりとした丸みと、今にも折れそうな繊細な幹の連続は、こうした小伐区林分や異なる林齢の混在のおかげで眺望することができる。

一般用材林のアメニティ

 一般用材林のアメニティを構成する因子として、地元住民は、壮大さ・均一性・清れつさ・環境をあげ、専門家は、壮大さ・通直性・自然性・清れつさをあげている。一方、専門家は、地元住民の評価因子に、人工林ではあっても自然性を加えている。

 次の階層の因子として、壮大さについては樹高・直径・林齢・密度・森の広さを、均一性では通直性・クローネ・直径・樹高を、通直性では間伐・林齢を、清れつさでは間伐・下刈り・枝打ち、環境では涼しさ・静けさ、自然性では多段構造をあげている。

 壮大さは、各評価集団に共通する因子であり、壮大さを構成する因子についても、集団間でそれほど差異は認められなかった。


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