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更新日:2012年7月11日

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樹幹流の樹種比較と土壌酸性化への影響

問題名:北方系森林の高度に自然力を活用した管理技術の確立

担当:北海道支所土壌研究室 真田勝・大友玲子・真田悦子・高橋正通
企画調整部海外研究情報室 太田誠一

背景と目的

近年,我が国でも関東平野のスギ林や山岳林の衰退と酸性雨や酸性霧との関連が問題となっている。北海道においても酸性雨・酸性雪が常時観測されており,酸性雨等が森林生態系に与える影響が懸念される。森林を通過する降水の性質と,その土壌への影響を明らかにするため,北海道の代表的樹種で,樹幹流・林内雨及び林外雨のpH(酸度)・EC(電気伝導度)・及び無機成分を継続的に調査するとともに,樹木の根元の土壌の酸性化の程度を比較した。(口絵写真(JPG:82KB)

成果

トドマツ・エゾマツの17年生造林地における降水のpHは,季節によって変動したが年間を通じておおむね林外雨が最も低く,次いでトドマツ樹幹流<トドマツ林内雨<エゾマツ林内雨<エゾマツ樹幹流の順であった。トドマツ林の樹幹流のpHは林内雨のそれより低いのに対し,エゾマツ林では逆に樹幹流より林内雨のpHが低く,樹幹流の水質が表層土壌の性質にも反映していた(図1)。また,水量は同じ降水量でも樹形や大きさが関係し,枝の付き方が漏斗形のトドマツ林は樹幹流が多く林内雨が少ない。一方,傘形のエゾマツ林では樹幹流より林内雨が多く,樹種の違いがみられた。

道内の主要樹種13種の樹幹流を比較すると, pHの範囲は年によってやや異なるが平均値の変動は小さく樹種固有の値を示した。樹幹流のpHで最も低いのはアカエゾマツ,次いでカラマツ,シラカンバの順で林外雨のpHより低い値を示した。他の多くの樹種は林外雨より高く,ハリギリやアサダではほぼ中性を示した(図2)。さらに樹幹流はpHのみならず樹種によって溶出してくる無機成分は異なっていた。

表層(0~5cm)の根元土壌と樹間土壌のpHを平均値で比較した。縦軸と横軸にそれぞれ根元と樹間土壌のpHをプロットすると,X>Yの範囲に分布し,多くの樹種で樹間より根元土壌のpH が低く,樹幹流の水質や量が影響しているものと推察された。その違いは樹幹流pHの低いスギやストローブマツ林で大きく,カラマツやトドマツでも有意であったが,エゾマツ林のみは逆に樹間より根元土壌のpHが有意に高かった。この傾向は5~10cm層の土壌でも認められた(図3 )。

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図1 林内における降水の模式図
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図2 樹幹流pHの平均値と偏差及び範囲
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図3 根本土壌pHと樹間土壌pHの関係

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