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更新日:2012年7月18日

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地球温暖化がブナ林とスギ人工林に与える影響の評価

植物生態研究領域 環境影響チーム長 田中 信行
森林植生研究領域 群落動態研究室 八木橋 勉
立地環境研究領域 養分環境研究室 重永 英年
海外研究領域 海外森林資源保全研究室 松本 陽介
四国支所長   垰田 宏

背景と目的

IPCC第2次評価報告書による第一世代のGCMの気候シナリオでは、空間分解能が数百kmと広域の予測だけを行っていて、地形が複雑で面積の小さい日本国内の影響予測には不十分である。気候変動が日本の森林へ与える影響を評価するためには、森林の空間スケールに合う空間分解能をもつ気候シナリオに基づいた影響予測が必要である。環境省地球環境研究総合推進費「地球温暖化による森林生態系の脆弱性の評価に関する研究」プロジェクトの中で行われた日本の森林への影響を評価する研究では、天然林の分布や人工林の活力へ影響を与える要因を特定し、温暖化した場合の影響を予測し、脆弱性を評価することを目標の一つとし、次のような成果をあげた。

成果

日本の冷温帯の代表的な森林であるブナ林とミズナラ林の分布と気候要因の関係解析の結果、冷涼で冬季降水量の多い多雪地域にミズナラ林が少ないことと、温暖で夏季降水量の少ない乾燥地域にブナ林が少ないことが明らかとなった。ブナ林の分布を規定する気候要因を温暖化シナリオCCSR(2090〜2099年、空間分解能1kmメッシュ)の気温と降水量の予測値に基づいて変化させた場合に推測される分布可能範囲を特定した(図1)。シナリオ通りの気候変化が起こると、九州、四国、中国地方、紀伊半島、関東地方のブナ林の適地は、わずかを残して消失すると推定されるので、脆弱なブナ林である。北海道では、現在の北限よりも東部や北部に分布可能域が広がるが、温度上昇時には石狩低地帯周辺にブナ林に適さない地域があることや、林分の断片化があるため、石狩低地帯よりも東や北へ分布を拡大することは困難であると考えられる。

温暖化に伴う乾燥と高温の進行により、代表的人工林であるスギ林の衰退が危惧されていることから、スギ林の分布地と気候要因の関係を解析した。乾燥ストレス要因を加味した雨量係数(RI、年平均降水量mm/年平均気温℃)を用いた予測では、渇水年の降水量が温暖化シナリオの予測値の70%であると仮定すると、スギの生存がほとんど不可能な雨量係数(RI)100以下の地域は、現在のスギ林面積の約1%から2090年代には約10%に増加すると予測された。スギが2090年代には消滅する地域は、関東平野に面する北西地域や東北地方の太平洋側の地域と予想された(図2の赤色)。

スギ衰退原因を高温とした場合、すなわち、年平均気温(MT)による予測では、スギが2090年代に消滅する地域(図3の赤色)は、関東以南・以西の太平洋に面した低標高地域で、また、スギ林の衰退地(図3の黄色)は東北地方南部より以南の低標高地域であると予測された。図3において、赤色と黄色で示した消滅および衰退の両者を合わせると、日本全体の森林面積の約10%、現在のスギ林の50%に達する。

なお、本研究は交付金プロジェクト「森林、海洋等におけるCO2収支の評価の高度化」による。

p23 fig1

図1 地球温暖化がブナ林の分布へ与える影響
温暖化シナリオCCSR(2090~2099年)の気候が長期間続く場合には、九州、四国、中国、紀伊、関東などの各地域でブナ林がほとんど消失する可能性がある。

p23 fig2

図2 スギ林分布地の2090~99年の雨量係数(RI)
(温暖化シナリオCCSRの降水量を70%とした場合)
赤色はスギ林の消滅する地域、黄色は衰退する地域

p23 fig3

図3 スギ林分布地の2090~99年の年平均気温(MT)
(温暖化シナリオCCSR)
赤色はスギ林の消滅する地域、黄色は衰退する地域

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