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更新日:2012年7月18日

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菌床栽培におけるダニ被害を回避する

森林昆虫研究領域 昆虫生態研究室 岡部 貴美子
九州支所 森林微生物管理研究グループ 宮崎 和弘

背景と目的

“菌床”によってきのこを栽培すると、肉体労働を軽減しかつ周年栽培により安定した収入を得ることができる。このため現在では、ブナシメジ、ナメコ、エノキタケ、シイタケなど多種類の菌床栽培きのこが市場に出回っている。しかし、きのこ菌床栽培ではしばしばダニの大発生と害菌の逐次発生による損害をこうむる。菌床栽培施設に発生するダニが、きのこの害菌を培地から培地へと運ぶのだろうか? ダニは害菌を運び込んだ培地で増えるのだろうか? 大発生前に施設内にダニがいることを知る方法はないのだろうか? 本研究では、実際にブナシメジ栽培過程で大発生の記録があるダニを用いた実験から、これら3つの疑問に答える栽培現場での有効なダニ害予防法を提案する。

成果

1. ダニは害菌を運ぶのか?

菌床栽培害虫として知られるケナガコナダニを米ぬか木粉培地内で大量に増殖させた。ダニが増殖するにつれ、この培地にはペニシリウム菌(害菌の一種)が蔓延した。このダニと菌が増殖した栽培容器の隣に、きのこ培養前の無菌培地の入った容器を置いた。するとダニは1週間以内に隣の容器へ移動を開始し(写真1)、移動した容器内にも害菌が蔓延した。DNA分析をしたところ、ダニが増殖した容器内の菌とダニが移動した容器内の菌は遺伝的に等しい、つまり同じものであることがわかった(写真2)。このことからダニは増殖すると容器の外へ這い出し、新しい培地へと害菌を運んでゆくことがわかった。

ダニもきのこ栽培培地で増えるのか?

ケナガコナダニとサジボウヒナダニのそれぞれ100頭を、ブナシメジ培養前、培養初期、中期、後期及びトリコデルマ菌が蔓延した培地で飼育した。7週間後に確認したところ表1に示すように、ダニが増殖した(+で示した)のは、きのこの培養前とトリコデルマ菌が蔓延した培地だけであった。すなわち、きのこ菌糸培養初期(接種から1週間)と既に害菌が入ってしまった培地では、ケナガコナダニ等の被害に対する警戒が必要である。

ダニの発生予察はできるのか?

大発生前にダニを発見し、いち早く防除する方法はないのだろうか。安価で簡便な寒天培地(MA、PSA、PDA培地)をトラップとして利用すること試みた。9cmシャーレに厚めの寒天培地(培地量は30ml以上)を作り、シャーレのふたを開けたまま2日間培養室内に放置した。その結果、米ぬか木粉培地やきのこを培養した培地よりも、MA、PSA、 PDA培地でダニがよく捕獲された。これまでの試験結果から、トラップの有効範囲は余り広くないことがわかっている。したがって、培養室の入り口や換気口などピンポイントで使うのが望ましい。このような発生予察、培養初期段階の徹底した衛生管理によって、ダニの伝搬による害菌汚染を軽減できるものと考える。

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写真1 きのこ栽培容器からのケナガコナダニの這い出し
栽培容器(広口ビン)の首と胴体上部にタングルフットを塗り、ふたの隙間から這い出したダニをトラップした。容器表面に広がる無数の点(うす茶色)が這い出したケナガコナダニ。

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写真2 ダニが発生した容器内の菌(1)と侵入した容器内に発生した菌(2)のPCRフィンガープリントパターンの比較(菌はPenicillium sp.)
Mはマーカーを示す。

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写真3 ケナガコナダニ(雌成虫・体長約0.5mm)

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写真4 サジボウヒナダニ(雌成虫・体長約0.3mm)

表1 培地に接種したダニの種類と増殖の有無(+は増殖、–は増殖なし)
培地の状態 ダニの種類
ケナガコダニ サジボウヒナダニ
培養前 + +
培養初期
培養中期
培養後期
トリコデルマ菌蔓延 +  

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