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栽培きのこのウイルス検出技術の開発
2006~2008年度
馬替由美(独立行政法人森林総合研究所)
栽培きのこは林業の50%近い金額の経済効果をもたらす重要な林産物であるが、その85%は現在菌床栽培によって生産されている。菌床栽培では、しばしば原因が特定できない栽培不良症状や奇形子実体などが発生する。その中には、菌類ウイルスが関与するものがあることが明らかになってきた。本課題では栽培きのこのウイルス検出技術を開発するとともに、各地で発生しているウイルスによる栽培不良症状を明らかにする。
栽培シイタケのウイルスを精製し、遺伝子構造を決定した後、ウイルス遺伝子診断法(RT-PCR法)を開発した。本RT-PCR法によって栽培きのこのウイルス感染が簡易に診断つくようになり、シイタケやエノキタケのウイルス病を明らかに(図1)。
純白系エノキタケが栽培中に突発的に褐変変異を起こした株に感染しているウイルイス (FvBV)の遺伝子配列を決定し、FvBVを特異的に検出するためのRT-PCR法を開発した。エノキタケのウイルス非感染野生株、感染野生株を栽培し、子実体の色とRT-PCRの結果を照合した結果、FvBVの感染とエノキタケ子実体の着色の間に、明らかな相関を認めた(図2)。
本プロジェクトで開発したウイルス検出技術は、きのこ生産者によって応用され、ウイルスによるきのこの栽培不良の発生防止に役立っている。さらに、シイタケ、エノキタケ以外の栽培きのこからウイルスが検出されており、きのこウイルスの感染経路の解明とウイルスフリー化実験が続行中である。
図1. RT-PCR法によるウイルス感染株の検出
図2. エノキタケの褐変ウイルスとRT-PCR法によるウイルス感染の検出
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