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更新日:2018年6月15日

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気候変動下での天然林における炭素収支の空間評価・将来予測手法の開発

 

森林炭素収支の空間評価、予測手法の開発の写真

1. 課題の名称

気候変動下での天然林における炭素収支の空間評価・将来予測手法の開発

2. 研究期間

2018-2020年度 交付金プロジェクト

3. 責任者

平田泰雅(研究ディレクター 気候変動研究担当)

4. 研究の背景

主要な温室効果ガスである二酸化炭素に対し、陸域生態系や海洋での吸収が気候変動の緩和に重要な役割を果たす。森林は陸域生態系の主要な部分を占めており、森林による二酸化炭素の吸収・固定が、大気中の二酸化炭素濃度の上昇速度の抑制に大きく寄与している。またIPCCの「極端現象」報告書では、台風など熱帯低気圧の発生率は減少するか横ばいであるが、最大風速は強度を増すと予測されている。将来、気象害による森林被害の増加が懸念されているため、気候変動下で台風被害を受けた天然林の炭素収支を明らかにすることが重要である。天然林における炭素収支の推定精度を向上させるためには、天然林の3次元構造や葉の展葉、落葉などの季節変化を明らかにする必要がある。

5. 研究の目的

本課題は、台風によるかく乱を受けた天然林および定常状態の変動を把握するため被害を受けていない天然林を対象として、衛星データを利用して森林炭素収支を空間的に評価するための手法を開発すること、および、将来の森林における炭素収支を精度よく予測する手法を開発することを目的とする。

6. 研究内容

(1)フラックス観測データを用いた炭素収支の年変動のモデル化
(2)ドローンを用いた連続観測による林冠の反射の指標化
(3)炭素収支の年変動の空間評価手法と気候変動シナリオによる将来予測手法の開発

 安比タワーから撮影したブナ林の季節変化の写真1 安比タワーから撮影したブナ林の季節変化の写真2 安比タワーから撮影したブナ林の季節変化の写真3

安比タワーからの撮影したブナ林の季節変化

7. 期待される研究成果

(1)台風のかく乱を受けた天然林および定常状態の天然林における炭素収支の年変動をモデル化し、またリモートセンシングによる天然林炭素収支の空間評価に必要となる基礎情報を提供する。これにより、高精細化していく気候モデルに対して、森林における高精度の炭素収支をインプットすることが可能となり、気候変動シナリオに基づく炭素収支の将来予測精度の向上に寄与する。

(2)台風のかく乱を受けた天然林および定常状態の天然林における林冠の反射スペクトルの季節変化が、ドローンを用いることにより高い地上分解能、時間分解能で明らかになる。これにより、衛星データによる森林炭素収支の空間評価に必要となるパラメータを提供することができ、高精細化していく気候モデルに対して、森林における高解像度の炭素収支をインプットすることが可能となる。

(3)衛星データから天然林における炭素収支の年変動を広域にわたり評価するための手法が開発される。また、IPCC第5次評価報告書に示された気候変動シナリオ基づいた天然林における炭素収支の将来予測が、これまでより高精細な地上分解能で可能となる。今後様々な技術の進展と国際競争による開発に伴い高精細化していく気候モデルに対して、かく乱影響を考慮した森林炭素収支をインプットすることにより、気候モデルの予測精度を向上させる。