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競争を生き抜くブナ稚樹の“知恵”:成長にあわせて体型を変える

2009年11月16日掲載

論文名 Ontogenetic strategy shift in sapling architecture of Fagus crenata in the dense understorey vegetation of canopy gaps created by selective cutting. (択伐施業によって作られた林冠ギャップの藪に生きるブナ稚樹が個体発生的に示す樹形戦略のシフト)
著者(所属) 八木 貴信(森林総合研究所東北支所 森林生態研究グループ)
掲載誌

Canadian Journal of Forest Research(カナダ森林科学研究、カナダ)、2009年

内容紹介  林床で発芽したブナが下層植生層を抜け、高木層に達し、木の実をつける成熟個体になるまでには数々の試練があります。そのなかでももっとも厳しい試練は、稚樹から高木に到る生育期における光を巡る周囲の植物との競争です。この研究では、周囲の植物との競争を生き抜くために、ブナの稚樹が成長に合わせて樹形を変化させていることを明らかにしました。ブナの稚樹は、背が低く光を巡る競争に勝ち目がない期間は、わずかな光を少しでも多く受け取れるように暗闇に耐えるズングリした樹形をとっていますが、背が伸びて勝ち目が出てくるにつれ“攻め”に転じます。それを境により早く樹冠上部に達して多くの光を受けて周囲の植物との競争に有利となる“すらり”とした樹形を持つように変化することがわかりました。このように他の植物との競争を生き抜くためには生育環境の変化に合わせた戦略が必要です。他の植物との相互関係や光環境に適応した樹種の成長戦略は、森林の成り立ちを理解する上で、また私たちが持続的に森林を利用する上で重要な基礎情報となります。

 

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