研究紹介 > 研究成果 > 研究最前線 2010年紹介分 > ハチは用心棒の数をアカリナリウム(ダニポケット)でコントロールする?
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2010年6月10日掲載
論文名 | Conditional mutualism between Allodynerus delphinalis (Hymenoptera: Vespidae) and Ensliniella parasitica (Astigmata: Winterschmidtiidae) may determine maximum parasitic mite infestation(アトボシキタドロバチとアトボシキタドロバチヤドリコナダニの条件的相利共生がダニの最大寄生数を決めているかも知れない) |
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著者(所属) | 岡部 貴美子・牧野 俊一(森林昆虫研究領域) |
掲載誌 |
Environmental Entomology(環境昆虫学) 39:424-429、2010年5月 |
内容紹介 | 森林は多様な生物が生態系を支えています。それらの生き物の間には「相利共生」と呼ばれる助け合いの関係が見られるがことがあります。この相利共生関係は生物多様性を維持してゆく上で、大変重要なシステムと考えられています。しかし、一見助け合いのように見える関係でも、相手をうまく使わないとかえって損をすることになりかねません。アトボシキタドロバチという狩りバチの一種は、子ども(幼虫)を天敵から守る用心棒のダニと共生しており、アカリナリウムと呼ばれる「ポケット」にダニを入れています。ハチはポケットからダニを巣に入れてやりますが、ダニの数が多いほど、天敵(寄生バチ)に勝つ確率が高くなります。ところが、ダニはドロバチ幼虫の体液を吸う寄生者でもあるので、通常の1.5倍~2.5倍のダニがいると幼虫は発育が遅れたり、死んでしまうことがわかりました。このことから、アカリナリウムの役割はダニを運ぶだけでなく、その狭い出口によって巣に入れるダニの数を制限する役目もあると考えられます。このような生物間相互作用の解明によって、生物多様性の保全における生物間相互作用の重要性が明らかになってきました。 |
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