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アジアの熱帯雨林の根を含めた炭素蓄積量を推定する式を開発

 2010年7月7日掲載

論文名 Estimation of root biomass based on excavation of individual root systems in a primary dipterocarp forest in Pasoh Forest Reserve, Peninsular Malaysia(半島マレーシア、パソ保護林のフタバガキ天然林における個体ごとの根系堀りとりによる根量の推定)
著者(所属) 新山 馨(東北支所)、梶本 卓也(植物生態研究領域)、松浦 陽次郎(立地環境研究領域)、山下 多聞(島根大学)、松尾 奈緒子(三重大学)、八代 裕一郎(岐阜大学)、Azizi Ripin・Abd. Rahman Kassim・Nur Supardi Noor(マレーシア森林研究所)
掲載誌

Journal of Tropical Ecology 26 : 1-14、2010年5月

doi:10.1017/S0266467410000040(外部サイトへリンク)

内容紹介  熱帯林の減少・劣化に由来するCO2の排出量は、人間活動による総排出量のおよそ20%に達すると見積もられています。そのため、熱帯林の減少・劣化を防ぐことによる排出削減注1)を、例えば炭素クレジットとして、国際的枠組みの中に組み込むことが検討されています。これを実現するには、熱帯林がどのくらいの炭素を蓄積し、破壊されるとどのくらいの炭素を失うのか、できるだけ正確に推定する必要があります。そのために、樹木の直径からバイオマス(乾燥重量、その約半分が炭素量)を推定する式が作成されていますが、熱帯林のなかでも最も大きな炭素蓄積量を持つ熱帯雨林の根を含めたバイオマスの推定式は、これまでには存在しませんでした。そのため、熱帯雨林の高さ50m、直径1mを越える樹木を含め、100本以上の樹木の根を掘り取って重さを測り、樹木の直径から地上部と根の重さを推定する式を世界で初めて作りました。そして、調べたマレーシア半島の熱帯雨林は、1ヘクタールあたりに根が96トン、地上部が531トンあると推定しました。根の重さは地上部の18%となり、これまで様々な森林から報告された19%~24%の範囲の下限にあることがわかりました。この式を用いることにより、アジアの熱帯雨林の森林減少・劣化の防止によるCO2削減効果を推定することが可能になりました。
注1)REDD (Reducing Emissions from Deforestation and forest Degradation in developing countries)と呼ばれる。

 

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