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2010年8月16日掲載
論文名 | Climate and topography drives macroscale biodiversity through land-use change in a human-dominated world (気候と地形は土地利用の変化を通じて広域的な生物多様性を決定する) |
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著者(所属) |
山浦 悠一(森林昆虫研究領域;現 北海道大学)、天野 達也・楠本 良延(農業環境技術研究所)、永田 尚志(国立環境研究所;現 新潟大学)、岡部 貴美子(森林昆虫研究領域) |
掲載誌 |
Oikos (生態学、スウェーデン) 発行号は未定 |
内容紹介 | 従来、広域的な生物の分布は気候と地形で決定されていると考えられてきました。一方で、森林の開発など土地利用の変化が生物に及ぼす影響は、数十m~数kmという狭い範囲で明らかにされてきました。陸域のほとんどが人類によって改変された現在、より広い範囲で生物の分布に土地利用が及ぼす影響に注目が集まっています。そこで、日本全国の森林性鳥類の種数に対して、気候、地形、土地利用が及ぼす影響を調査しました。森林性鳥類の種数は、小さい単位で見た場合よりも40×40kmと80×80kmという大きな単位で見た場合、気候と地形、土地利用と強く関係していました。そして森林性鳥類の種数は、40×40kmの範囲内に天然林が占める割合が40%を切ると減少し始めることがわかりました。本来、気温が高く標高の低い地域には生物の種数が多いことが知られていますが、日本の場合、そのような地域の天然林はすでに農地や都市などへ転換されていました。そのため、実際には平均気温が低く標高の高い地域で森林性鳥類の種数は高く維持されていました。これとは逆に、温暖な地域(年平均気温8度より高い地域)もしくは標高の低い地域(平均標高が270m以下の平野)では森林性鳥類の種数が減少していたのです。したがって、気候と地形は人類による土地利用様式を決定する大きな要因であり、土地利用の変化を介して間接的に広域的な生物多様性の分布を決定していると考えられます。生物多様性を保全するために具体性を持った森林管理計画を作成するためには、このような生物の分布と気候、地形という自然環境と、人類による土地利用の関係をほかの分類群でも明らかにしていく必要があります。 |
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