研究紹介 > 研究成果 > 研究最前線 2011年紹介分 > ツキノワグマが木の皮を剥いで枯らしてしまう行動は特定の家系に限った「動物の文化」だった!
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2011年8月23日掲載
論文名 | Characteristics of Asian black bears stripping bark from coniferous trees(針葉樹の樹皮を剥ぐツキノワグマの特徴) |
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著者(所属) |
北村芙美(京都大学大学院農学研究科)、大西尚樹(東北支所生物多様性研究グループ) |
掲載誌 |
Acta Theriologica 56巻3号267–273 (2011年7月) |
内容紹介 | ツキノワグマがスギやヒノキなどの針葉樹の樹皮を剥ぎ、その内側の形成層を歯で削り取って採食する“クマハギ”と呼ばれる被害が本州や四国のツキノワグマの生息域で問題となっています。クマハギは生育が良好な立木に被害が発生する傾向があるため、被害額が大きくなり林業経営を圧迫しています。こうした被害を防ぐためには、まずどのようなクマがクマハギ被害を起こすのか、を知る必要があります。そこで、クマハギ被害木に付着した体毛から遺伝子を抽出し、加害個体の特定を行いました。その結果、その地域に生息している全てのクマが被害を起こしているのではなく、特定の家系が被害を起こしていることが明らかになりました。子グマは生後約1年半を母グマと一緒に生活します。その間に子グマは母グマからクマハギ行動を学習していると考えられます。一方、クマは森林内で単独生活をしているため、クマハギをしない母グマから生まれたクマは、成長してもクマハギを学習する機会がありません。そのため、クマハギはある特定の家系内に留まることになります。こうしたことから、クマハギ行動は“文化”といえるでしょう。このように、クマハギ行動が次世代に伝わる仕組みが明らかになったことで、将来被害対策の新たな展開が期待できます。 |
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