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ケヤマハンノキの二酸化炭素濃度の上昇に対する反応は、土壌のリン酸養分量に大きく依存する

 2011年11月1日掲載

論文名 Effects of elevated atmospheric carbon dioxide, soil nutrients and water conditions on photosynthetic and growth responses of Alnus hirsuta.(ケヤマハンノキの高CO2に対する光合成と成長反応に及ぼす土壌養分・水分条件の影響)
著者(所属)

飛田 博順(森林総研 植物生態研究領域)、上村 章(森林総研 北海道支所)、北尾 光俊(森林総研 植物生態研究領域)、北岡 哲(森林総研 北海道支所)、丸山 温(林野庁)、宇都木 玄(森林総研 北海道支所)

掲載誌

Functional Plant Biology、38巻(2011年8月)発行元 CSIRO Publishing

DOI: 10.1071/FP11024(外部サイトへリンク)

内容紹介

石油などの燃焼により、大気中の二酸化炭素(CO2)濃度が今後も上昇すると言われています。CO2濃度が高くなると樹木の成長が促進され、炭素の吸収能力が増えることが期待されますが、そのためには土壌養分も必要です。そこで、森林生態系で不足しがちな窒素を、大気中から取り込む窒素固定能を持つ樹木(窒素固定樹種)を窒素供給源として活用することが考えられます。ハンノキ属樹種のケヤマハンノキは、温帯から冷温帯域における主要な窒素固定樹種ですが、一般に窒素固定樹種はリン酸の要求度が高いことが知られています。そのため、CO2濃度が高くなった時のケヤマハンノキの成長と窒素固定能にもリン酸養分量の影響が及ぶのか調べました。その結果、土壌のリン酸養分量が多い場合にはCO2濃度の上昇により通常のCO2濃度の時と比べて光合成や成長量が増加し、ケヤマハンノキ1個体あたりの窒素固定能も高くなるが、リン酸養分量が不足すると、CO2濃度が高くなっても通常のCO2濃度の時と比べて成長が良くならず、窒素固定能も上昇しないことがわかりました。この成果は、将来、CO2濃度が上昇したときにケヤマハンノキを炭素吸収源かつ窒素供給源として活用するときの計画づくりに役立つと期待できます。

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