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新たな測定方法で根が水を吸う深度を明らかに

2013年1月31日掲載

論文名 Application of seasonal variations of deuterium excess to the estimation of water sources of trees in humid areas like Japan (d-excessの季節変化を利用した樹木の吸水深度の推定)
著者(所属)

久保田 多余子(森林総研東北支所)、坪山 良夫(水土保全研究領域)、壁谷 直記(森林総研九州支所)

掲載誌

Hydrological Research Letters(水文水資源学会オンラインレター誌)、vol.6、 pp. 65-69 水文・水資源学会、2012.07、DOI:10.3178/HRL.6.65(外部サイトへリンク)

内容紹介

森林は水を消費しますので、樹木が土壌のどのくらいの深さから水を吸っているかを知る必要があります。そのためには、土を掘って根の分布から吸水範囲を推察したり、通道組織中の水の安定同位体比から非破壊で推定する方法が使われます。従来の安定同位体比法は半乾燥地域では適した方法ですが、日本のように雨の多い地域には適用できませんでした。今回、水の安定同位体比そのものではなく、d-excessという指標(水素の安定同位体比−酸素の安定同位体比×8)を使って、日本でも非破壊により樹木の吸水深度を推定することができました。

スギとヒノキ(茨城県産;20年生)の枝の通道組織中の水、降水、土壌水(表層から深さ別に200cmまで)および地下水を定期的に採取し、酸素と水素の安定同位体比を分析しd-excessを求めました。d-excessは季節により変化し、その振幅は、降水、浅い土壌水(10~100cm)、深い土壌水(150~200cm)、地下水の順に小さくなりました。一方、スギ・ヒノキの通道組織中の水のd-excessも季節変化を示し、それは浅い土壌水の季節変化と最もよい相関がありました。このことから、10~100 cmの土壌水が主な吸水範囲であると考えられました。この成果は、森林の水循環の研究や樹木の生育と土壌水分との関係解析などに応用できます。

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