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2013年4月26日掲載
論文名 | 高濃度火山ガスが噴出する三宅島噴火堆積物斜面における噴出物表層部の理化学性変化が植生回復に与える影響 |
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著者(所属) |
小川 泰浩(水土保全研究領域)・黒川 潮(森林総合研究所関西支所)・阿部 和時(日本大学)・久保寺 秀夫(農業食品産業技術総合研究機構) |
掲載誌 | 日本緑化工学会誌 38巻2号、2012年11月 DOI:10.7211/jjsrt.38.290(外部サイトへリンク) |
内容紹介 |
三宅島では2000年の雄山噴火によって山腹の植生が壊滅的な被害を受けただけでなく高濃度火山ガスを避けるため住民も2005年まで島外避難を余儀なくされました。噴火から12年が経過した2012年時点では、火山ガス(二酸化硫黄)の放出が大幅に減少し、火山ガスや地表の酸性化で深刻な被害を受けた雄山の植生も、草本を中心として自然が回復しつつあります。 本研究では、防災対策のため、高濃度火山ガスが噴出する時期にいち早く山腹を緑にする可能性を検討しました。現在よりも火山ガス噴出量が多く島内の立ち入り規制が行われていた2002年(最大日量2万トン)と、居住が許可されて2年が経過した2007年(最大日量5千トン)の2つの時期において、播種による植生の回復状況と山腹斜面の火山噴出物の物理性と化学性を比較しました。その結果、2002年は火山ガス濃度が高く、緑化の試みは成功しませんでした。2007年になるとガス濃度は低下し、ガスが継続的に流下するような谷地形を除いて、次第に植生は回復しつつありました。特にリター(落葉や落枝)が被覆するような場所で植生の回復が進んでいました。リターによって噴出物の物理性(硬さ・水分・孔隙)が改善されて植生回復が進むと考えられました。一方、リターの被覆がない場合は、植生回復は遅れていました。その場所の火山噴出物を顕微鏡で観察したところ、地表面にクラスト層(細かい土粒子で構成された隙間の少ない層)が形成されていて地表が硬くなっており、種子が定着、発芽しにくいためと考えられました。まだ火山ガスの影響が残る時期に緑化する場合、火山ガスだけでなく、地形の状況、クラスト層やリター層の有無に影響されます。地表に残ったリターを活用すると植生回復を早められる可能性があります。こうした知見は各地の活火山地域の緑化にも活用できそうです。 |
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