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2013年5月10日掲載
論文名 | Vegetation response in the southern Lake Baikal region to abrupt climate events over the past 33 cal kyr |
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著者(所属) |
志知 幸治(立地環境研究領域)、高原 光(京都府立大学)、長谷 義隆(御所浦白亜紀資料館)、渡邊 隆広・奈良 郁子(東北大学)、中村 俊夫(名古屋大学)、河合 崇欣(国際環境研究協会) |
掲載誌 | Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology, 275, Elsevier, 2013年4月1日、DOI:10.1016/j.palaeo.2013.02.015(外部サイトへリンク) |
内容紹介 |
氷期から現在の温暖な気候への移行する途中で、北アメリカ大陸を覆っていた氷河が気温の上昇で融けて大量の淡水となって北大西洋に流れ込んだため、海域の塩分濃度が低下し、赤道と極域を結ぶ暖かなメキシコ湾流の流れが停滞して、一時的に北太平洋周辺地域が寒冷化しました。 今回、北大西洋から遠く離れたロシアのバイカル湖から採取した湖底堆積物に含まれる花粉を分析した結果、約12900~11500年前(ヤンガードライアス寒冷期)には寒冷化に伴う乾燥化のため草本植生が増加し、約8200年前(8200年寒冷化イベント)にシベリアマツやシベリアトウヒ等のシベリアタイガ構成種が減少したことが明らかになりました。この地域では寒冷化によって草原が広がることやシベリアタイガ構成種の割合が減少することが過去の調査で確認されており、北大西洋地域における寒冷化が、遠く離れたシベリア内陸部にも影響を及ぼしたことが示唆されました。 温暖化に伴ってグリーンランドなどの氷床の大量の融解がおこると予測されており、それによって寒冷期がもたらされるのではないかとも言われています。今回の発見はその際の寒冷化が北半球の広範囲に及ぼす可能性を示したものであり、温暖化の森林への影響を考える上で重要です。 |
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