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2013年7月17日掲載
論文名 | Estimation of the population size and viability of the Bonin White-eye Apalopteron familiare in the Bonin Islands, Japan. (小笠原諸島におけるメグロの個体数推定と個体群の存続可能性) |
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著者(所属) |
川上 和人(野生動物研究領域)、樋口 広芳(慶應大) |
掲載誌 | Ornithological Science、12巻、51-56、2013年6月 DOI:10.2326/osj.12.51(外部サイトへリンク) |
内容紹介 |
小笠原諸島は、生態系の持つ価値が高いことから、2011年に世界自然遺産に登録されました。メグロは、小笠原諸島の固有鳥類としてはただ一種の生き残りで、絶滅危惧種に指定されています。この鳥は、以前は聟島列島、父島列島、母島列島に分布していましたが、現在では母島列島の3つの島にしか生き残っておらず、聟島列島、父島列島のメグロは、生息地の破壊や外来哺乳類の捕食により絶滅したと考えられています。このため、母島列島の個体群も同じように絶滅が心配されるので、個体数を推定した上で、個体群の変動をシミュレーションし、絶滅確率が高くなる条件について評価しました。 メグロは高木の森林では密度が高く、低木林や農耕地では低密度です。そこで、環境による密度の違いを考慮して個体数推定を行ったところ、母島では約15,000羽、属島の向島と妹島にはそれぞれ400~500羽が生息すると推定されました。 脚環をつけた野生個体から寿命や死亡率、繁殖成功したつがいの数、などについての詳しい情報を集め、推定個体数に基づいてシミュレーションを行い、将来絶滅する確率を明らかにしました。この結果、母島では現状で、生息場所が多少狭くなっても、メグロは簡単には絶滅しないことが分かりました。しかし、個体数が少ない属島では、繁殖に成功するつがいが現在より10%ほど減少するだけで急激に絶滅しやすくなることがわかりました。 メグロが生き残る島には、捕食者となる外来のネズミ類が生息しています。特に小さな島では、ネズミ類の食物も不足しやすいため、突然メグロの巣を襲う頻度が高まる可能性もあります。このため、ネズミ駆除を行うなど、適切な管理が必要です。 |
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