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熱帯林択伐による土壌撹乱の影響は20年以上続く

2013年11月25日掲載

論文名

Effects of soil compaction on the growth and mortality of planted dipterocarp seedlings in a logged-over tropical rainforest in Sarawak, Malaysia.(マレーシアサラワク州の択伐林における土壌圧縮がフタバガキ植栽苗の成長と枯死に与える影響)

著者(所属)

服部 大輔(愛媛大)、田中 憲蔵(植物生態研究領域)、入野 和朗(愛媛大)、ケンダワン ジョセフ ジャワ(サラワク植林公社)、二宮 生夫(愛媛大)、櫻井 克年(高知大)

掲載誌

Forest Ecology and Management, October 2013 DOI:10.1016/j.foreco.2013.09.023(外部サイトへリンク)

内容紹介

東南アジアの熱帯雨林では、木材伐採などによる森林劣化が深刻で、もともと自生していたフタバガキなど郷土樹木の植林による木材資源や炭素蓄積量の回復が求められています。熱帯雨林で行われて来た従来型の択伐施業では、ブルドーザーなど重機が多用されるため、土壌圧縮や表土流亡などの土壌撹乱が広範囲で起きます。このような土壌撹乱が、植栽苗にどのような影響を与えるかは不明な点が多く、これまで長期的にモニタリング調査した例はありませんでした。

そこで、マレーシアサラワク州の択伐後20年が経過した森林において、フタバガキ科樹木を様々な撹乱強度の林地に植栽し、苗の成長と枯死、根の伸長を7年間にわたり継続調査しました。その結果、伐採後20年が経過しても土壌圧縮の影響は残っており、強く撹乱された植栽地では苗の初期枯死率が7割近くに達していました。撹乱がなかった植栽地に比べると、根の伸長が強く阻害されており、水分吸収が妨げられることなどが原因で苗の枯死率が高くなったと考えられます。一方、植栽してから7年後まで生き残った苗は、土壌圧縮による影響が少なく、植栽初期の根の伸長阻害の回避が重要であることも分かりました。土壌が一度強く圧縮されてしまうと自然に回復するのは難しく、土壌撹乱が強い林地では、植え穴を大きくするなど根の伸長阻害を回避する植栽技術の開発が必要です。

この成果は、熱帯林の回復のための技術開発を進める上で、重要な知見となります。

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