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希少種と外来種の入れ替わりが明瞭に ―都市林の植物の50年間の変化―

2014年5月1日掲載

論文名

東京多摩地方南西部の都市近郊林における植物相の変遷 ―50年間のフロラリストの比較

著者(所属)

島田 和則・勝木 俊雄・岩本 宏二郎・大中 みちる(多摩森林科学園)

掲載誌

植生学会誌、31巻1号、植生学会、2014年6月(掲載予定) 論文へのリンク(外部サイトへリンク)

内容紹介

大都市周辺にある森林(都市近郊林と呼ばれます)では、身近な野生生物の保全などが重要視されています。しかし、長期間にわたるモニタリングのデータがなく、孤立した森林でどれだけ多様な生物を保全できるのかよくわかっていませんでした。

東京の郊外にある森林総合研究所多摩森林科学園では、1953年から植物目録がつくられてきました。この資料を使って、約50年間の都市近郊林の植物相を比較し、その変化について検討しました。

その結果、過去(1953年、1965年)に記録された植物種(一部亜種、変種などを含む)は合計790種、現在(2010年)では767種で、全体の種数の変化はわずかでした。この中で過去にだけ記録された植物は164種、現在にだけ記録された植物は141種、過去と現在の両方で記録された植物は626種でした。つまり、2割弱の植物が入れ替わっていました。さらに、過去には記録され、現在消失した植物は、新しく侵入した植物より希少種の割合が高く(過去のみ32.9%、現在のみ6.4%)、新しく侵入した植物では、外来種の割合が高い (過去のみ6.7%、現在のみ63.8%)ことがわかりました。

このように、都市近郊林の植物は種数だけで見ると大きく変わっていないようにみえますが、内容を見ると希少種が減って外来種が増えるという質的な変化がありました。こうした変化には、周辺の開発行為による孤立化の進行や、近郊林内の土地改変、林内を利用する人々の採取圧など、さまざまな要因が影響していると考えられます。今後の都市近郊林管理の方策を考える上で、このような継続的な生物相のモニタリング情報を生かしていきたいと考えています。

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