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DNAからわかったサクラ品種の真実 ―そのほとんどは雑種が起源―

2014年6月16日掲載

論文名

Origins of Japanese flowering cherry (Prunus subgenus Cerasus) cultivars revealed using nuclear SSR markers. (核SSRマーカーを利用したDNA解析により明らかになった日本のサクラの栽培品種の起源)

著者(所属)

加藤 珠理(首都大学東京)、松本 麻子・吉村 研介(森林遺伝研究領域)、勝木 俊雄・岩本 宏二郎(多摩森林科学園)、河原 孝行(四国支所)、向井 譲(岐阜大学)、津田 吉晃(ウプサラ大学)、石尾 将吾・中村 健太郎(住友林業)、森脇 和郎(遺伝学普及会)、城石 俊彦・五條堀 孝(国立遺伝学研究所)、吉丸 博志(多摩森林科学園)

掲載誌

Tree Genetics & Genomes, Published online, 30 January 2014, DOI: 10.1007/s11295-014-0697-1(外部サイトへリンク)

内容紹介

サクラは日本人にとって馴染み深い花木の一つで、ソメイヨシノに代表される一重の品種から、八重や枝垂れしだれ、二季咲きのものなど、数多くの栽培品種が存在します。そのサクラ品種がDNAで正確に識別できるようになったことは3年前当研究所からプレスリリースしました。そして、それら215品種がどのような野生種を起源とするのか、この研究で明らかにしました。

枝垂桜(親種エドヒガン)、伊豆桜(親種オオシマザクラ)のように、1種の親から選抜されたものは少なく、多くの品種が(自然も含む)種間交配に由来していました。その代表例がソメイヨシノで、これまでの見解通りオオシマザクラとエドヒガンの交雑に由来していることが確認されました。栽培品種サトザクラの仲間は野生種オオシマザクラが元になったと言われていましたが、それ以上のことはこれまでわかっていませんでした。今回の解析により、太白たいはく上匂じょうにおいなど多くの品種で野生種ヤマザクラとオオシマザクラの交雑によることが明らかになりました。なかには、狩衣かりぎぬのように、「オオシマザクラ」、「ヤマザクラ」、「マメザクラ―オクチョウジザクラ系統」の3種が交雑していると考えられるものもありました。一方、これまで行われてきた形態による分類の結果を覆す発見もありました。長州緋桜という品種は花弁のピンク色が強いことから白いオオシマザクラとピンク色のオオヤマザクラとの交雑起源が推定されていましたが、オオヤマザクラは起源でなく、これまでサクラの品種形成にはほとんど貢献していないと思われていたタカネザクラとオオシマザクラの交雑起源であることがわかりました。

サクラの品種の交配親には他にもオオヤマザクラ、カスミザクラ、チョウジザクラの国内野生種やカンヒザクラ、カラミザクラの台湾・中国原産の野生種がかかわっており、サクラの品種が多様な野生種から作られたことを物語っています。こうした成果は、サクラの栽培品種の管理や今後の新品種作出の有用な情報となります。

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