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地球温暖化に対するブナの適応策

2014年7月1日掲載

論文名

Spatial conservation planning under climate change: Using species distribution modeling to assess priority for adaptive management of Fagus crenata in Japan (気候変化に応じた地理的な保全計画: 日本のブナにおける分布予測モデルを用いた温暖化適応策の優先順位の検証)

著者(所属)

中尾 勝洋(植物生態研究領域)、 比嘉 基紀(高知大学)、 津山 幾太郎(北海道支所)、 松井 哲哉(植物生態研究領域)、 堀川 真弘(トヨタ自動車バイオ・緑化事業部)、 田中 信行(北海道支所)

掲載誌

Journal for Nature Conservation Volume 21, Issue 6, December 2013, Pages 406–413,  DOI: 10.1016/j.jnc.2013.06.003(外部サイトへリンク)

内容紹介

自然生態系における地球温暖化対策として、生物種の生育域変化に対応した適応策が重要です。本研究ではブナを事例に、現在と将来の気候条件で、その潜在生育可能な地域の変化が現在設定されている自然保護区域と空間的にどのような位置関係にあるのかを検討しました。

その結果、東日本から北海道にかけては、温暖化後のブナの潜在生育域の多くが保護区域内で減少すると予測された一方、その周辺のこれまで寒冷すぎた保護区域外の地域に生育可能な地域がシフトします。そのため、この地域では、保護区域の見直しがブナの保全に有効です。一方、西日本ではブナの生育域は山岳地帯の最上部に広がっているために、温暖化によって逃げ場がなくなり、潜在生育可能な地域そのものがほぼ消滅すると予測されます。生育可能な地域でなくなっても、人為的な植栽などによる積極的な維持管理をすることが、ブナに依存している生物多様性を守るためには必要と考えられます。また、西日本のブナは遺伝的に東日本と異なるため、その積極的な保全は日本全体のブナの遺伝的多様性の維持に欠かせないと考えられます。このように、地球温暖化に対するブナへの適応策は、保護区見直しと積極的管理の地域に応じた選択が必要であることを、潜在生育域変化と保護区とを重ね合わせることで初めて明らかにしました。

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