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山菜採りの行動をGPSロガーで解明

2014年7月10日掲載

論文名

Spatial characteristics of edible wild fern harvesting in mountainous villages in northeastern Japan using GPS tracks. (GPS軌跡を用いた東北地方の山村における食用シダ採取の空間的特徴)

著者(所属)

松浦 俊也(森林管理研究領域)、杉村 乾(長崎大学)、宮本 麻子(森林管理研究領域)、田中 浩(研究コーディネータ)、田中 伸彦(東海大学)

掲載誌

Forests, 5, February 2014,  DOI: 10.3390/f5020269(外部サイトへリンク)

内容紹介

山菜採りは農山村で古くから盛んに行われ、地域ごとの食文化を支えるとともに、人々のレクリエーションとしても重要です。森林がもたらす生態系サービスのひとつである山菜を、地域の人々はどのような場所で採取利用しているのでしょうか。

本研究では、福島県南会津郡の山村集落において、主要な山菜であるクサソテツ(こごみ)、ワラビ、ゼンマイのシダ3種について、GPSロガーを用いて採取行動を記録し、地理情報システム(GIS)と統計モデルにより採取環境の定量評価を行いました。その結果、クサソテツは沢沿いの緩斜面の草地、ワラビは伐採跡地や若齢スギ植林地、ゼンマイは低木林が多い北東向きの雪崩斜面で主に採取されていました。渓畔域や雪崩地などの自然攪乱地や伐採による人為攪乱地では、林内よりも大きな個体が密に生え、採取の効率が良いと考えられました。また、クサソテツとワラビは、道路近くでよく採られていました。

GPSロガーを用いた解析により、採取者の個人的な熟練に依存するためにこれまでは感覚的にしか捉えられていなかった山菜の種ごとの採取適地を、精度良く推定できるようになりました。また、人々の採取行動が、山菜の生態・分布に対する豊かな経験的知恵によって支えられていることが明らかになりました。GPSロガーを用いた今後の研究で、地域の人々の「賢明な」森林利用の特徴を理解し、人々の生活に根ざした森林管理や計画につなげていきたいと考えています。

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