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熱帯林は養分の乏しい土壌で細根を増やす

2015年8月7日掲載

論文名

Variation in the aboveground stand structure and fine-root biomass of Bornean heath (kerangas) forests in relation to altitude and soil nitrogen availability (標高と土壌窒素可給性に関連したボルネオの熱帯ヒース(ケランガス)林の地上部森林構造および細根バイオマスのバリエーション)

著者(所属)

宮本 和樹(四国支所)、和頴 朗太(農業環境技術研究所)、相場 慎一郎(鹿児島大学)、Reuben Nilus(サバ森林研究センター)

掲載誌

Trees – structure and function, (in press), Springer, May 2015 (published online)、DOI:10.1007/s00468-015-1210-7(外部サイトへリンク)

内容紹介

樹木の根のうち細根注)は土壌養分や水分の吸収にとって重要なだけでなく、森林における地下部の炭素循環においても重要な役割を果たしていることが知られています。養分の乏しい環境に成立する森林ほど限られた養分を効率よく獲得、利用するために細根を増やすと考えられ、熱帯林でも養分環境の違いは細根量の違いとして現れると予想されます。

私たちは、ポドゾルとよばれる極端に土壌養分の乏しい環境でみられる熱帯ヒース林と比較的土壌養分の良好な熱帯林を対象に、標高と土壌の窒素養分量の違いが地上部の森林構造や細根量(地表から15cmまで)におよぼす影響を調べました。予想したように、細根量は土壌の窒素養分量が少ない場所の森林(ヒース林)で多くなっていました。また、細根量が多い森林ほど地上部現存量や樹高が低く、出現する種数も少なくなっていました。高標高のヒース林は最も細根量が多い一方、地上部現存量と土壌窒素養分量が最も少なくなっていました。これは土壌の窒素養分量が少ない上に気温が低いため、土壌有機物の分解速度が遅いことが影響していると考えられます。細根量や地上部森林構造には、標高にともなう気温の変化と土壌の窒素養分量が影響をおよぼしていることが示されました。

熱帯林生態系の炭素や養分循環における細根の役割を明らかにした今回の成果は、今後熱帯林を保全・管理する上で重要な知見となります。

注)一般に直径2~5mm未満で木化していない根のこと。本研究では直径2mm未満。

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