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オナガキバチが材内で生育するにはカビが必要だった

2015年9月9日掲載

論文名

キバチ共生菌キバチウロコタケ Amylostereum laevigatum を接種した材へのオナガキバチ Xeris spectrum の産卵選好度と繁殖成功度

著者(所属)

松本 剛史・佐藤 重穂(森林総合研究所 四国支所)

掲載誌

日本森林学会誌 97巻5号 2015年10月(予定)

内容紹介

キバチ類の雌成虫は主要な造林樹種であるスギ・ヒノキの辺材部を加害します。さらに、菌嚢と呼ばれる菌を蓄えるポケットのような組織の中にキバチウロコタケという共生菌(カビの一種)をもち、産卵時に材の中に菌を接種します。キバチウロコタケはキバチ類の幼虫の成長に重要な働きをしていますが、同時に材の変色を起こします。

一方、オナガキバチはキバチウロコタケを持たないため、産卵しても材に変色を起こしませんが、キバチウロコタケの助け無しで幼虫をどのように育てるのかが分かりませんでした。そこで、キバチウロコタケをヒノキ丸太に人工的に接種して林内に放置したところ、翌年オナガキバチが接種丸太から羽化脱出してきました。一方、キバチウロコタケを植え込まなかった対照区からは一頭も羽化脱出してきませんでした。

この結果から、自らが共生菌を持たないオナガキバチにおいても、材内の幼虫の生育にキバチウロコタケが必須であることが初めて明らかになりました。オナガキバチは他のキバチ類が産卵してキバチウロコタケがいる材だけを加害していたのです。

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